『もう一つの物語』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
『もう一つの物語』
今日もまた、誰かのためにカードを裏返す。
私のところへやってくるのは、何かに悩んだり迷ったりしている人達だ。
彼らの話を聞き、言葉の奥にある悩みや逡巡を探る。
カードには幾つもの意味がある。
読み解くための取捨選択は大事だ。
占い師に必要なのは、インスピレーションよりも相談者の心の内を覗く観察眼かもしれない。
私が告げるのは、あるかもしれない彼らのもう一つの物語。
だからそう、こんなふうに思い詰めて顔を強張らせ、何かを潜ませたバッグを私から隠すようにしているこの人に、どう告げようか。
あなたのその計画は上手くいくでしょう、ですが人生は破綻します。
誰かを害するために、背中を押して欲しくてやってくる人は結構いるのだ。
『もう一つの物語』
右と左どちらへ行くか。酒場で出会った戦士と魔法使いどちらを仲間にするか。高貴な姫君と共に旅してきた仲間どちらを花嫁に迎えるか。人生には選択が付き纏い続けている。
「わしの配下に降ればお前の命だけは助けてやろう」
世界を闇に陥れた魔王は圧倒的な力で討伐隊の仲間を屠り、ひとり残した私に向かってそんな事を言う。諫言だ、と断じて歯向かった事はこれまでに数知れない。その度に私もみなと同じ運命を辿らされ、慈悲深き女神とやらに息を吹き返させられるのを何度も経験してきた。旅の仲間たちは死しても死ねぬ役目を与えられることに嫌気が差して討伐隊を辞していった。最初から残っているのは私と妻だけ。
「またふたりだけになっちゃったね」
「……あのとき姫さまと結婚していればよかった」
笑いかけた妻はその一言で表情を凍らせ、そして去っていった。
ひとりきりで魔王の城へと赴く。道中に魔王の手下が何度も立ちはだかったが、羽虫のごとくに煩わしいだけだった。それほどまでに私は強いのに、どうして魔王を倒すことが出来なかったのか。胸に決意を秘めて先へ先へと進む。
旅の伴を連れずに現れた私に魔王は愉快そうに笑いかける。
「わしの配下に降りに来たのか?」
「そうだ」
その返答に一層笑みを深めた魔王が手招きをした。私は魔王の胸に抱かれる。
魔王を倒す物語は私の物語ではなかった。そうとしか考えられない状況に最初から提示されていた選択を受け入れる。これまで描いてきた魔王を倒した後の世界のことが一抹思い出されたが、闇に身体を融かす感覚の心地よさににすべて飲み込まれていった。
私の前にかつての私のような目の輝きを宿した者が立ちはだかる。あれが魔王を倒す物語を紡ぐ者ならば、羨望とも嫉妬とも言える感情を掻き立てられるのも納得がいく。私の成り得なかった存在は私を容易く倒し、魔王にも打ち勝つことができるのか。見届けるために全力を賭すと決めて柄を握った。
もうひとつのお話
貴方に願う
最高のプレゼントを
限りなく形ないモノ
寝返りを打った先に貴方のうなじがあること
最高のプレゼントを
揺るぎない曖昧なモノ
寒くて目が覚めた時に貴方の二の腕があること
貴方に願う
貴方はもういない
君はどこにいるんだろう
見当たらないなあ
ボクは最近迷って考えている
男なのか女なのか?
僕はどこにも属せないけど
いつも考える
あの時あっちの道を選んでいたら、今頃どうしていたかな。家族ができて子供もできて、でもきっと今よりもっともっと窮屈で嫌なこともたくさんあったかもしれない。
もうひとつの物語なんてない。
誰にもそんなものは存在しない。
この世界は本当に私がいるべき世界なのだろうか。
もっと違う、私がいるべき世界がちゃんとあるのではないか。そう思う時がある。
私が主人公で私がいて成り立つ世界が。
“もう一つの物語”
英雄になった人の傍にいた、英雄になれなかった人。
誰よりも輝いている人の傍にいた、光を閉ざされた人。
そんな人たちの話は、きっと無数にあるに違いない。
あの時貴方の手をとらなかったら
私はどうなっていたのだろう
今巡り会った人たちとは
きっと会えていないだろう
違う人たちと違う環境で
豊かな生活が出来ていたかもしれない
それでも 今 はそれなりに納得している
大切な人たちが周りにいるから
違う環境で生きたとしても
それはそれで納得しているだろう
でも少しだけ
違う世界線も見てみたい
「もう一つの物語」
卒業後、専門学校に進んでいたら。
転職の時、別の就職先を選んでいたら。
あの日、諦めずに続けていたら。
あの時、こうしていたら。
わたしの人生という物語は
どんな風に変わっていたのだろう。
『もう一つの物語』
私の家族は、お母様と、お姉様と、違う母から生まれた血の繋がらない妹。
お父様は既に他界したと聞いた。
4人家族で暮らす日々。
お姉様もお母様も妹のことをストレスの捌け口にして、雑用を押し付けてはキツく当たっている。
いつも直向きな義理の妹を私は本当は好きなのだが、家庭内の振る舞いを考えた結果、私も妹の「可愛がり」に加担している。
心は痛むが、表立って庇うことも自分が何とかしてあげることもできない。
でも、あの子に幸せになってほしい。
そういえば今度、お城で舞踏会があると聞いた。
ドレスも用意してもらえないあの子はきっと留守番だけど。
そうだ。
私には何も出来なくても、不思議な力を持つ人ならあの子を助けてくれるかもしれない。
私はお母様とお姉様には内緒で、森に住むという魔法使いに会いに行くことにした。
もう一つの物語といったら江戸川乱歩のd坂の殺人事件とかかなぁ。他にもたくさんあるよね。いつか書いてみたいけど、論理的に解決してどちらも読者を納得させなければいけないなんて超難問だなぁ。今の実力じゃあ無理だ。
因みに今は東川篤哉さんの「交換殺人には向かない夜」
読んでます。面白い!
最近はストーリーが全く思い浮かばないので日記みたいになってます。
「もう一つの物語」
あの日あの時
あの決断をしていなければ
私は今もあの人と一緒にいるのだろうか?
そう考えた事もある
でも娘がいる今は
何があっても
今の物語が1番いい
ただそれだけ
もう一つの物語
「なぁ?この世界の他に、世界があるって知ってるか?」と友人が僕に言ってきた。
「はぁ?」と僕から間抜けな声が出た。
友人はそんな僕を見ながら、話を続けようとする。
僕はそんな友人に言う。
「そんなの作り話かなんかだろ。
なんつったけ?“並行世界”とか“Another World”とか言ったけ?そんなもんは所詮娯楽で作られたもんだろ。『本当に世界移動した』とか言って海外の奴らは動画にするけどさぁ…あれはただ単に寝ぼけたか、勘違いだろ。思い違いにもほどがあるだろ。」
僕が呆れながら言うと、友人はいつにも増して真剣な表情で僕を見つめる。
「…………………………」
友人は何か言いたげにしていた。
僕が「何黙ってんだよ。言わなきゃ分からんよ」と苛立ちを露わにしながら言うと、友人は周りに人がいないことを確認し小声で話し始めた。
「実は…“俺”は別世界の“俺”と入れ替わったんだ」
真剣な顔をしながら話す友人に、我慢できなくなり吹き出してしまった。困惑している友人を見てより笑ってしまった。
「そんなことねーよwてかいつも“俺”って言わねーじゃんw」俺がそういうと友人は「そうだよな!」と言って「嘘だよw」と笑っていた。
「やっぱ嘘じゃんかw」
「…嘘じゃないだけどな……」
この時僕が笑っているのを冷たい目で見ていたのは知りもしなかった。
もしかしたら本当に別世界があって、もう一つの物語が存在するのかもな。
・5『もう一つの物語』
追い出されてしまった。あいつはもう一つの地球に行くらしい。
オレも追いかけようかと思ったが詳しい場所まではわからない。なんでわざわざ紛争地の地球に行くのか。わかってる、今のこの地球の為になるからだ。
【終わり】
もう一つお皿があったなら
お菊さんはあんなことになってないし
眠り姫も呪いにかけられずにすんだのかもね。
もう一つお皿があったなら
もう一つの物語が生まれていたのか。
いいや。
物語にならなかったかもしれない。
「もう一つの物語」
高い咆哮が空気を変えるように広がった。
耳の奥がツンと痛くなり、手足の先まで冷えて震える。和樹は短刀を握り込んで身体を硬くする。使い込んだ師の刀身はギシッと鳴りながら掌に馴染んだ。
両隣の重騎士が地面を唸らせ前進したのが見えた。直後、前方から熱風が吹き荒れる。
2人の重騎士が大きな盾で全体を守ったのだ。それでも漏れ出した熱は肌を焦がす。
「熱っっ」
後ろから少年の声が聞こえてくる。
敵の攻撃を正面の陣形で正確に迎え撃てる。和樹は指揮官の強さを噛みしめた。
「行くぞ」
「うん」
自分より10も下の少年が脇をすり抜け飛んでいった。
古内東子さんの歌声でマスターベーションする当日欠勤した今朝は雨 ... 似合っている空もようにほんのりと幸福感を覚える。ここで言うマスターベーションとは無論性的な事柄ではない。自慰とは呼べても性的快楽ではない ... ではないというか異なる。止められない時間を止めてその状態で静かな飛沫の無い ... 静かと云うより静寂という言い方を敢えてしたくなる ... そうした燥がない騒がしくない雨は連想させない曇り空の湖の水面みたいな ... 薄暗い湖畔から眺めているような気分 .... 。会ったことの無い知り合いでもない歌手にさん付けするのはしたくなるのはそういう事が私なりの理由ではある。楽しい事とか時間とか、うれしい、心地良い、勿論気持ち良いとかなんかは今は個人的には以ての外である。寂しさという敢えて薄いシーツに包まって秋風に吹かれて物想いに耽りたい訳でもないが ... 終りを念わない始まりまた初めてに一喜一憂するのがもう本当に嫌なんだよね。全く無関係な話を仮に出すと戦争は悪だと教育されながら時代を経て人が増え過ぎたから感染症から殺人ワクチンに地震洪水火事戦争を企て擁立する。存えたければ富を発掘し善を棄て悪となれと何処からともなく聴こえてくる。いきる ... 擦り傷負って擦れて枯れていぎる ... 生きて途々意義を問い始める。水溜りに倒れて、晴れて陽の下で死われてたりしたら最幸だ。
: もう一つの物語
実はね、このお話しには
もう一つの物語が隠されているの
パタンと本を閉じた瞳が輝いた
君は想像力に長けている
本当にそうなんじゃないかと思うほど
毎回君の話に引き込まれてしまう
今だってそうだ
こうなったらもうとめられない
僕は君の話を聞くのが好きだ
でももっと好きなのは
コロコロ変わる表情かな
その物語の登場人物のように
何にだってなりきってしまう
だから君を見ているだけで…
僕の心の中には、豊かな未来へと
続く一つの物語がある
君の物語の登場人物に
僕の名前があればいいのだが…
至福の笑みを浮かべながら
口いっぱいにケーキを頬張る君
ドキドキとワクワクが入り雑じった瞳に
君を愛してやまない僕の顔が映っていた…
桜月夜
「去年もな。酷く悩んだお題なんよ」
某所在住物書きは、ただただ酷く途方に暮れて、天井を見てはため息を吐いている。
「AとBの物語のうち、もう片方の物語」の意味で投稿すべきか、「もう、一つの物語にまとめちまえよ」の意味で投稿すれば楽なのか。
「もう一つ、物語を集めてください」なんて珍妙もあり得る――ネタから形にならないのである。
「しかも、次の次に配信されるお題がだな……」
去年と同じお題が、次の次、すなわち10月31日に配信されるとしたら、「それ」の高難度にも対処する必要がある。 どうしよう。
「去年の投稿分、コピペしちまおうかな」
そんなズルせず、もう一つの物語を作りましょう。
――――――
最近最近のおはなしです。都内某所のおはなしです。
某稲荷神社は、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が家族で暮らしており、草が花が山菜が、いつか昔の東京を留めて芽吹く、静かで美しい森の中。
時折妙な連中が芽吹いたり、頭を出したり、■■■したりしていますが、
そういうのは大抵、都内で漢方医として労働する父狐に見つかり、『世界線管理局 ◯◯担当行き』と書かれた黒穴に、ドンドとブチ込まれるのです。
黒穴の先のことは、別の世界のおはなしです。
「もう一つの物語」が、同時進行しておるのです。
今回はお題がお題ということで、こちらの「黒穴の先の物語」にも、注目してみましょう。
その日、不思議な化け狐の一家の、コンコン末っ子子狐が、「別の世界」、「別の物語」に繋がっている黒穴の近くで、こっくり、こっくり。
幸福に昼寝など、しておりました。
今日の黒穴は、向こうの世界線管理局からのお知らせ、事前通達によると、「システムメンテナンスにともない終日利用停止」。
今、その黒穴の中に入ると、世界線設定システムと座標修正システムの大幅な誤差により、世界線管理局ではないどこかに落っこちてしまうそうです。
そうですか。それはそれは、大変ですね。
「んんん、」
コンコン子狐、お昼寝の夢の中で、美味しそうなバターケーキの白兎を追いかけます。
「まてっ、ケーキ!」
前回投稿分で、お揚げさんもお賽銭も貰えなかったコンコン子狐。今回こそは美味を食ってやると、
こやん! 寝ぼけた目をパッチリ開き、
くわぁぁ、こやん! 寝ぼけた頭で突っ走り、
そのまま「もう一つの物語」の入口、
いつもなら世界線管理局に繋がっている筈の窓口、
つまりシステムメンテナンス中の黒穴に、
スポン、落っこちてしまったのです。
「あれ?」
ポンポンかわいいおなかを下に、子狐、黒穴の中をゆっくり、ゆっくり。落ちていきます。
「……あれ?」
今まで追いかけていた、バターケーキ兎はどこ?
もうちょっとでガバチョと捕まえられた、今日のおやつはどこに消えたの?
コンコン子狐、頭の上にハテナマークを量産。
一気に、目が覚めました。
黒穴を抜けて、ちゃんと重力が働きますと、
ぽすん! 誰かの頭の上に不時着しまして、
髪で滑るので前足と爪と肉球で踏ん張って、
誰かの顔に、ぽんぽん、ぶら下がってしまいました。
「ぎゃー!? けものくせぇ!!」
コンコン子狐が不時着した人間は、いきなり、突然、目の前がモフモフでいっぱいになったので、
それはそれは、もう、それは。大パニック。
子狐を顔から引き剥がそうと必死です。
「なんだ!!何が起きた!?」
それにしてもこの人間、稲荷の狐に「くせぇ」とは失礼な。子狐はちゃんと週に3回お風呂に入るし、3〜4ヶ月に1回ペットサロンで綺麗にしてもらっておるのです。それを「くせぇ」など。ぷんぷん。
「確保!!」
子狐の背後から、サビを含む少々かすれ声のテノールが、酷く鋭利に、短く、飛んできました。
なんだなんだ、何がどうした、どれがどうなった。
コンコン子狐、全然状況が掴めません。
気が付けば数秒で、子狐がぶら下がってた人間は、
押し倒され、持ってる「何か」を奪われ、うつ伏せに転がされ、腕を縛られてしまいました。
そしてコンコン子狐は、頭にハテナマークを大量展開したまま、サビ声のテノールさんに、いつの間にか抱えられておったのでした。
「あれれ……?」
何がどうしてこうなった。
そのままコンコン子狐は、世界線管理局の本部にキャリーケースで連れてこられまして、
「管理局に多大な貢献と協力をしてくれたお礼」として、たっぷり、極上の、ジャーキーとクッキーと稲荷寿司を貰って、元の世界に戻されました。
「なんで……?」
以上、今回のお題回収を優先した、リアリティーと物理法則ガン無視のおはなしでした。
子狐が「どこ」に落っこちて、「誰」の顔にぶら下がっていたのかは、それこそ次か、次の次あたり。「もう一つの物語」の管轄でして……
もう一つの物語
(本稿を下書きとして保管)
2024.10.29 藍