『もう一つの物語』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「もう一つの物語」
今までの選択肢で別の道を進んでいたら、どんな人生になっただろう。
別の大学に行っていたら、別の仕事についていたら、別の人と結婚していたら…。
または過去に戻ってもう一度やり直せるなら、どんなことをするだろう。
もっと勉強して、もっと遊んで、もっとおいしいものを食べて…。
そうは言っても、時間は過去に戻せない。
むしろ未来のことを想像して、今後の人生を充実させる方法を考えていくほうが有益だ。
死ぬ前に後悔しないよう、自分らしい毎日を送りたい。
今の自分は未来の自分がタイムスリップしてきたのだ、と考えてやりたいことをやると心に決めた。
私が挫折も絶望も無く
全て成功した人間だったら、
私は「私」では無かった。
否定から生まれた私を
私は肯定しよう。
決意
見えない世界を進むと
光に満ちた世界に変わる
勇気はいるけども
※もう一つの物語
もう一つの物語、ね…。
歳をとって思うんだが、一人のひとは皆、いくつもの物語を持っていて、ひとつの人生を複層的に生きているように感じる。社会の求めに沿って進む領域を持つ一方で、ひとりの個人として表現することを求める領域があり、基本的にはその両方が相互に調和しているならば、概ね人生も「穏やかな活発」とでも言うべき力が発揮されるように思える。
さて、「一般的見地というメガネを通して、他人が見る自分」について考えてみた。有り体に言ってしまえば、私自身はこれを重要視してない。私の生きる日々はこの人生が終わるまで、全て、ずっと、私自身の手を離れることはないし、私のあらゆる選択の結果を自分自身で受け取る責任と力も、私のものだ。「責任」とは「自由」のまたの名であり「尊厳」「力」の言い換えだ。「存在の尊厳」があるから「人格に自由」があり(何を考えるか思うかは自由だよね?)、「現実をつくり、選択する力(自分が考え思うことは自分の現実をつくる)」があるから「自分自身の選択の結果に責任がある」のだ。これに関しては永い年月をかけて考え抜いてきたが、「他の答え的な電球の閃き」にたどり着けない。…なので、他人が他人の思い込みメガネで私をどう見ようと、私が私をどう見るかということほど重要じゃないのだ。
なので、私には私にしか認識できないであろう私の物語を生きている。一方で、子どもの学校では「得体の知れない変わり者」などとクダラナクモメンドクサイ何かに引っ掛からないように、周りの人を不安にさせないための「多分、これがフツー」な振る舞いを心がけているのだ。…まあ、どう見えているのかは知らぬが。
周りに合わせた物語もあれば、自分独特の物語もあるのは、私の感覚では「きわめて普通で自然なこと」なのだ。
自分の道を、自分の命の行方を、自分自身以外のものに預けてしまっては歩けなくなるのも経験した。ひたすらに喜ばれたくて、自分の本当の気持ちに蓋をしながら尽くしても尽くしても、誰も本当には喜ばなかった。長年にわたる「しんどい努力」の果てには砂漠のような心象風景の虚しさが居座り続ける現実を、やっと認め受け入れた時には私は中年になっていたが、そのとき決意したのだ。「自分自身の真実に従う」と。
以来、私の日々から虚しさは去った。心の中から、涙さえ涸れる砂漠が消えた。自分の暮らしの中の、大切な物事に気づくようになった。
このことを何がしか表現したのは初めてだ。
これは私の、家族も友達も知らない、けれども間違いなく真実な、もう一つの物語だ。
もし私の人生で別の物語があったとしても
今の私と同じような物語になるんだろうな。
だって私は変われないから。私は私を生きているから。
━━━━━━━━━━━━━━━もう一つの物語
─もう一つの物語─
私は昔から二つの記憶があった。
その二つは、正反対のような記憶だった。
今の記憶は、とても幸せだ。
愛されて、楽しくて、幸せで。
不満の感じることがない生活を送っている。
でも、もう一つの記憶。
それがとても悲惨だった。
同級生には虐められ、親には無視され、
恋人には裏切られ、挙句の果てには川へ落ちて自殺。
本当に最悪で、辛くて、苦しい生活。
それを知っていて、私は今の記憶でよかったと思っている。
もし、幸せな記憶を持ったまま、最悪な人生を迎えたら。
想像するだけで、苦しくて辛くなった。
だからもう、忘れよう。前の記憶は忘れ、今の幸せに身を預け。
もう一つの物語を今の私で楽しもう。
もう辛くない。前のように、失敗はしない。
バッドエンドの話を聞くと、「もう一つの物語があるんだ」という言葉を期待する。でも、今回はそんな言葉なんて無かった。
遠い昔に君達と巡った世界を、再び私は歩いていた。
あてのない旅、自由気ままなひとり旅だ。
あの頃とは違い、キレイに整備された街道。
魔物も盗賊も居ないのは少しだけ寂しく感じるが、これも時代の流れだろう。
魔王を倒して訪れた束の間の平和の後。
共通の敵を失った人類は、国家間で戦争を始めた。
大地は割け、空が燃え、雄大な山々は木っ端微塵に吹き飛ばされた。
何年も続いた戦争は、疫病と大飢饉によって終わりを迎えた。
今や人類は絶滅寸前の種族となり、何処かの山奥に隠れ住んでいるらしく、滅多に見ることはない。
私はそれを嬉しく思った、もう私を恨めしげに睨みつけてくる奴等が居なくなったのだから。
ひんやりと気持ち良い風が背に生えた翼や尾を掠めていく。
嗚呼……、君にもこんなふうに擽られたことがあったな。
君達との懐かしい記憶を思い出しながら、今日もひとり、旅をする。
テーマ「もう一つの物語」
新幹線に乗るのは久し振りだ。
ずいぶん時間をかけて吟味を重ねて選んだ駅弁だが、乗車して早速広げると瞬く間に食べ終わった。
車窓を眺めていてもなんだか時間を持て余して、弁当を食べ終わった寂しさが募る。
ひま潰しに鞄から読みかけの小説を出して読み始めた。
電車の規則正しい振動が眠気を誘う。
まどろみ起きてはまたどこまで読んだっけ?と同じページで一進一退し、なかなかストーリーが進まない。
そのうち寝オチした夢の中で、読んでいた筋とはかけ離れたもう一つの物語が脳内で紡ぎ出されてゆく。
もう一つの物語
背伸びしてみた。
髪を巻いて
赤いリップを塗って
高いヒールを履いて
アクセサリーを身に付けて
それで街並みにあるジュエリーショップのガラスに映った自分を見てみた。
随分とらしくなかった。
普段の私は
パーカーを着て
スニーカーを履いて
キャップを被って
イヤホンをつけて
でも、それが心地良い。
だけど、この大人ぶった人生も悪くない。
"もう一つの物語"
『もう一つの物語』
とある雨の日。
仕事先の病院は山奥にあって、
普段はバイク通勤をしている私も
雨の日はバスを利用していた。
夕暮れになり
周りに夜の色が染みていく。
すると遠くから大きな音が聞こえて
森が驚いたかのようにざわめく。
「衝突事故かな…」
金属が押しつぶされたような破損音。
音が気になって立ち上がっていると、
音と反対側から少しずつ光が近付いて
来ている事に気がついた。
夜を照らす光は、定刻通り到着したバス。
たまにしかバスに乗らない私は
ひとまず1番後ろの席に座る。
バスが扉を閉めようとした瞬間。
滑り込みで1人の女の子が飛び乗ってきた。
私はその女の子を見てハッとなる。
女の子は、着ていたカッパを少し叩き
水しぶきを扉の近くで落としてから
運転手さんの真後ろの席に座った。
私はその女の子を知っている。
よく分からない事が起きている。
そんな事を考えながら女の子の方を見ていると
バスの車窓からさっきの音の正体が見えてきた。
ワンボックスカーが反対車線側の岩崖に
正面から衝突していた。
事故現場には後続車とみられる車が止まっており
その車のドライバーらしき男性が電話を架けていた。
その状況から通報はされていると判断したのか、
バスはそのまま事故現場の隣を通り過ぎていく。
私はふと前方の座席に座った女の子の方を見た。
すると彼女はこちらを振り返っており、
ニコッと笑顔を向けた。
改めてハッとした私はもう一度事故現場を見返す。
白色のワンボックスカー…。
……!?
ある事を思い出した私はバスの前方に視線を戻す。
すると、さっきまで女の子が座っていた席は
空席となっていた。
私は女の子の事を知っている。
彼女は、数日前に勤務先の病院に運び込まれた患者。
母親と出掛けていた所、前方から走ってきた車に
跳ねられて母親が庇ったお陰か彼女は一命を取り留めた。
母親は衝突の衝撃で即死。
犯人は未だに逃走していて、
白色のワンボックスカーだったと聞いている。
一命を取り留めていた女の子も
今日のお昼頃に息を引き取った。
女の子の部屋に置かれていた
小さいサイズのカッパを親族の方にお渡しする為に
包装するのが今日の最後の仕事だった。
後日、病院で聞いた噂によると
女の子が巻き込まれた交通事故の犯人は
逃走中に単独事故を起こし死亡したとの事。
噂には添え口として"天罰が下った"と言われていた。
しかし、私にはあの日の出来事が全て
神様の仕業ではないと思えた。
私が見た現象。
誰かに言った所で、誰も信じないだろう。
私はそれでも少し清々した気分だった。
あの時の出来事は
私の中の"もう一つの物語"として胸にしまっておこう。
自分が選んだ選択が間違っているのか、私たちには分からない。
違う道を歩んでしまった、もうひとつの物語の私は…どのように足掻いて、苦しんでいるだろうか。
そして、どのように喜び、笑っているのだろうか。
その物語の結末を見てみたいと言ったら、嘘になる。だけど、
私が選んできた選択、道が。
人生の正解であることを、心の底から願っている自分がいる。
過去など、変えられやしないから。
『もう一つの物語』
やぁやぁ、こんにちは
いや、なに、少しばかり私の話を聴いてくれるかい?
そんなに時間をとらせやしない
ほんの少しだけでいいからね
うんうん、ではでは、はなそうか
なぁ、君は人で言う勇者とやらなのだろう?
沢山の魔族を滅ぼしついこの時、念願の魔王を打倒した
それはもう見事!君はたちまち英雄だ!!
君達人にはこれから平和が訪れるのだろう?
羨ましい限りだよ
私達魔族には滅びしかないというに
なぁ、君は弱々しい魔族の子さえ殺したね
なぁ君は、ただ強かった我等が王を殺したね
ねぇ、君は、これからどうなるのだろうね
私達の王様は、魔王様は、あのひとは
優しかったよ、私達を愛してくれていたよ
人に追いやられ住処を無くした魔達を受け入れてくれた
人と魔、共に有ろうなどと言っていたよ
なぁ、君達はこれから本当に幸せになるのかい?
平和になるのかい?
私達を悪にしたあとは誰を悪にするんだい?
なぁ、君は本当に英雄かい?
彼ら人類が悪とした我等が英雄を殺した君は
ハッピーエンド?…ははっ、反吐が出る」
【これからの話、もしくは弱者の物語
────それは、もう一つの物語】
もう一つの物語
貴方の隣。
そこが居場所になったかもしれない。
二人で笑い合うこともあったかもしれない。
悲しいことがあれば慰め合って、そうしてまた前を向くこともあったかもしれない。
あり得たかもしれない、未来。
けれどももうあり得ない、未来。
遠ざかる貴方の背中を見つめながら、拳を握りしめた。
高校受験に失敗してから私の人生は大きく変わった。
正直すごく高校生活が苦しかった。でも1人、親友ができた。
ある日ふとその子の前で口にした
「中学戻りたいかも。」
って言葉。
それを聞いてその子はちょっと怒って
「やり直して、この高校に来んかったら私と友達になれへんやん。そんなん嫌やで。」
って言った。
それを聞いてはじめてここに来てよかったって思えたよ。もし受験に成功するもう一つの物語が選べたとしても私はまたこの道を選ぶ。あなたと出会うために。
「AがBの国を滅ぼしたんでしょ?」
そう私たちは習っている。
「大変よく出来ました」
そう肯定した。
だが如何にも彼の言葉の節々から噛み合わない。馬鹿にしている、と言うわけではない。
生徒の反応を楽しむ教師のようだ。
すいすい細い道を置いていかれないように続く。行き先も気になるが彼が言わんとしていることも気がかりだ。
「違うの?」
思わず聞いてしまった。
「正確には半分正解半分ハズレ」
「半分」
ようやく目的地らしい。足を止めた、と思えば此方を振り返る。
「我々が教育機関で唱えられているのは歴史の一側面でしかない」
「先生。もっと短く」
「つまり、教えるに当たっていくらか簡略化され不都合だと廃止された面がある」
私の要求に呆れながら結論を披露した。
「……別に珍しくないと思うけど……」
歴史など視点が変わるだけで途端に別の顔をする。
「さてここからはもう一つの物語」
古びた書籍を懐から取り出した。
今から数えて大層古い年代。授業では古典と言われるような古い書体が敷き詰められており若干頭が痛くなった。
「まさか歴史の再演しようなんて言わないよね」
「さて、都合が悪いと言ったのは覚えているかい。その都合は、誰にとって悪いんだろうね」
選んでこなかった岐路の現在を
見てみたいと思う
あなたにひとめ会いたいから
あなたがいる世界の空気を吸ってみたい
それでも、もしあのときに戻れたとしても
わたしはいまと同じ答えを出して
あなたが傍にいない世界を選ぶんだろう
今のわたし自身が嫌いじゃないから
あなたに愛されるわたしと取って代わりたいわけじゃない
ただ、もし、あのときに戻れるのなら
さいごのあなたの顔、
今度はちゃんと目に焼き付けたい
◇もうひとつの物語◇
あーあ何で私あの人とずっと話してんだろ、時間の無駄よね、もうやめたい、嘘つき続けたくない。自分つらいし、相手にも悪いほんとごめんね。
「枯れた花」
咲き誇ってた時の色を忘れちゃったんだね
萎れてに下を向いてると抱きしめたくなるよ
僕なのに僕じゃない
切り抜かれたときだけを見ているような
本当にそこに彼の人生があったような
不思議と惹かれる空間
僕の苦しみを貴方は忘れている
覚める度に羨ましく思う
盲目なだけかもしれない
それでも貴方の幸せを僕のものにしたい
見えなかった痛みに苦しみ続けたとしても
そしたら僕はまた、僕ではない貴方に言うのだろう
僕の物語と貴方の物語
交換してはくれませんか
彼は今日も呑気に生活を送っていた
僕の声には耳を傾けずに
『もう一つの物語』