『いつまでも捨てられないもの』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
貴女への想いが、俺のいつまでも捨てられないものの筆頭ですね。それを捨てられていたら、俺は今頃、次の魂のかたちを得て、新しい生を謳歌していたことでしょう。
勿論、本当に捨てたいなどと思ったことはありませんよ。
只、俺の抱えている最も大切で最も手放しがたいものの話をしただけです。
大丈夫、安心してくださいね。
絶対に俺は、貴女の最期の最後まで、貴女のお傍を離れません。
愛しています、XX様。
ずっとずっと、誰よりも、愛しています。
昔は頭が良かった
昔は痩せてた
昔は強かった
昔は綺麗だった
昔はモテてた
今じゃなくて昔の記憶を辿れば山のように誇れる思い出が出てきて
それを武勇伝のようにみんなに語って
じゃあもし誇れる思い出を全部捨てられてしまったら?
私には何が残るのだろう
今この瞬間も数年後には誇れるのだろうか
少し怖くなる
昔を語って生きている今を誇れるだろうか
当たり前のように想像したその「数年後」は訪れるのだろうか
今を大切に
今この瞬間を誇れる
そんな人生にしたい
だから捨てなくてはいいから、昔を誇る気持ちを少し薄めたい
それを一生懸命と言うのだと私は思う
日記。
自分で書いたものじゃない。
自分にとって特別だった人間の遺品。
生きてる時はそんな素振りなかったのに、遺品整理のときにあの日記を読んで、アイツが自分に向けている気持ちを知ってしまった。
まさか、死んでから両想いになるなんて。
あれは、アイツが生きていた証、アイツも自分のことを好いていてくれた証だから、絶対に捨てたりしないし、誰にも捨てさせない。
【いつまでも捨てられないもの】
後悔
あのときこうしていれば良かった
小さな後悔が集まり
大きな後悔に
どこかにおいていければいいのにな。
どこかに投げられたらいいのにな。
紙袋
弁当割り箸
包装紙
菓子の空缶
ヨレヨレパンツ
__________________________
いつまでも捨てられないもの
いつまでも
捨てられないものと
捨てようと思って
忘れてたものと
捨てたと思ったら
捨ててなかったものと
これなんだっけ
多分
燃えるゴミでいける。
しましまのタオル
ブタの抱き枕
ふわふわのストラップ
石のついたネックレス
なにも捨てられない
ずっとなにもすてられてないよ
(いつまでも捨てられないもの)
「結花まだそれ持ってたの?そんなのさっさと捨てちゃいなよ」
放課後、各々の部活動場所へ向かう生徒達によって空いたクラス教室で今日の予習をしようとノートと教科書を開いた私の隣の席へ親友の美紅は腰掛け、私が握っているボールペンを見るとげんなりとした様子をみせた。
「だってまだインクは出るし捨てるなんて勿体ないかなって」
「いやいや、それ見る度にあいつのこと思い出したらイライラしちゃうって」
「確かに大輝くんのことは思い出すけど」
「でしょ〜!誕プレで貰ったものだろうが新しい女に乗り換えたクズ男からもらった物なんて捨てな」
そう。このボールペンは元彼の大輝くんから1か月前の私の誕生日プレゼントにもらったものだ。
「結花って名前にぴったりだろ?」
照れながら彼から渡されたハッピーバースデーと印字された包紙を開けると持ち手の部分に花が中にあしらわれた可愛らしいボールペンが入っていた。
「かわいい...。これ本当に貰ってもいいの?」
「当たり前だろ。大事に使ってくれよな。誕生日おめでとう結花」
嬉しすぎてどうにかなってしまいそうだ。
はにかみながら私の頭を撫でてくれる彼を盗み見し自然と口角が上がってしまう。
この時が永遠に続けばいいのにと願った。
でも大好きな彼は私の事なんてすぐに飽きてしまった。私は未だに大輝くんへの恋心もボールペンも捨てられないのに。
【いつまでも捨てられないもの】
いつまでも捨てられないもの
「あ...まだ捨ててなかったんだ」
合唱部の、活動案内のチラシ。
2年前、先輩からもらったA5サイズのそれは、クリアファイルに入れられて引き出しの下の方に丁寧に仕舞われていた。
ファイルから出して眺めると、一緒に封印したはずの苦みが心に重くのしかかる。
もう1年経つというのに、未練がましさには自分でも呆れてしまう。
先輩の恋愛対象は女の子じゃないから、どうしようもないというのに。
言ってしまえば紙切れ一枚。何度も捨ててしまおうかと思った。
でもその度に、記憶の中の眩しい笑顔に捨てる意思が揺るがされてしまうのだった。
『入学おめでとう。このあとミニコンサートするの。よかったら見に来てね』
『合唱部入ってくれるの?嬉しい!これからよろしくね』
今日も例に漏れず、2年前の春を思い出す。
苦い思い出だけじゃない。
たとえ片想いでも、失恋でも、いい初恋だったと思う。
一緒に過ごした時間は幸せだった。
僕はチラシをファイルに入れ、元の場所に戻した。
いつかこの恋が過去のものになったとき、捨てるか捨てないか、決められたらいいと思う。
フォロワーさんが私のために手に入れてくれた、当時好きだったキャラのアクキーがいつまでも捨てられない。
ご当地物で、そこにしか売ってなかった。そこに行こうと思ったら、新幹線に乗るしかなかった。今なら好きに行けるけど、当時は子どもが乳幼児で出かけることも自分の時間を作ることもままならなかった。そのキャラクターだけが、荒んだ精神の支えだった。
アクキーが手に入らないことが本当に悲しくて辛くてTwitterで嘆いていると、フォロワーさんが買ってきますよ!と声をかけてくれた。その場所で生活をしている方で、気さくに快く請け負ってくれた。
キャラクターのアクキーが手に入ることも嬉しかったけど、こんな自分に声をかけてくれたことが本当に救われた気持ちだった。かわいいイラスト付きで送ってくれた。本当に嬉しかった。
今は違うキャラクターが好きで、違うジャンルに沼っているけど、そのアクキーとイラストは捨てずに取っている。
これやるよ
お前みたいだろ、お前泣き虫だから
なにこれ気持ち悪い、こんなのどこで見つけてきたのよ
わたしは泣き虫かもしれないけど
鳴き虫じゃないのよ、もう
と、いって二人で笑った
君が初めてくれたプレゼント
セミの携帯ストラップ
それからたった1週間
たったの1週間で君はぽっくり逝ってしまった
どっちかって言うと君がセミじゃない
わたしは夏が来る度、鳴きながら過ごす
スマホに無理やり繋げたセミのストラップを眺めながら
『いつまでも捨てられないもの』
【お題:いつまでも捨てられないもの/創作/散文/お題を、ネクロマンサーのお嬢さんのセリフに】
そんなんじゃ仕方がないじゃない
あつめた貝殻を骨にして
こぼした葡萄を肉にして
やっとここまで来たんだもの
貴方がダミーで 私がオリジナル
嫌だ 嫌だ と 喚いても
そんなんじゃ 仕方がないじゃない
あなたの魂だけは
いつまでも捨てられないもの
思い出になってしまった「あの日」を抱えて生きていた。過去に縋りつき、未来を見ないふりして後ろ歩きで進んでいた。過去の栄光は私をにせものの光で飾り立ててくれたし、私を好いたともだちは今だって私を友達と呼んでくれるはずだった。
あのとき輝いていた夕焼けや、たいせつに拾い集めた貝殻や、貴方と交わしたちいさな約束は、私の不甲斐ないポケットからすぐに落っこちてしまうのに、誰にも効力を示さない虚栄だけはいくら振り払おうとも剥がれそうにない。
わたしはいつも、大切なものを見定め損ねる。
こんなに遠くまで、捨てきれずに歩いてきてしまった。それならもういっそのこと、これを正解にしてしまおうか。否定されたわたしだけの正義を信じ込み、正解にしていく人生だって悪くない、君となら。
No.13【いつまでも捨てられないもの】
5年くらい前から、身の回りのいらない物を整理して捨てている。
半分くらいは捨ててしまった。
残している物は、今使っている物や将来必要な物、替えのきかない物が多い。
たとえば、アルバムや思い出の品を置いている。
アルバムは整理して、子供達に残すようにしたが、思い出箱はそのままにしている。
銀色の箱の中に、肩たたき券や母の日のお手紙。
将来、足腰ダメになって歩けなくなった時には、この箱の中を楽しんで、ごきげんでいるためである。
『 いつまでも捨てられないもの』
ごみ箱の前に持っていってわ迷う。
父の手紙。
父は私には興味がなく、いつも放っとかれていた。
話なんて続く訳もなく、家がいつの間にか落ち着かない場所になっていた。
父の言葉なんて一言も信じたことがない。
そんな人が亡くなる前に残した手紙。
ほんとうはこの世でいちばん愛している。
こんな父ですまなかった。
涙の染みた跡とともに書かれていた。
絶対うそだ。
綺麗事を言うんじゃない。
そう思い、ごみ箱の前に立つ。
でも、母がいない私。
どこにも信じられるものがなく、1人孤独に生きてきた。
心の底で、この言葉に縋りたいと思う私がいたんだ。
決心なんて言葉がないように、いつまでも捨てられない。
死ぬまでダメなんだ。
私は貴方を心のなかに、おいて置きすぎたのかもしれない。
心の奥の「私」に一番近いところに。
だから、貴方を特別だと思ったのかな。
とっくにすぐ、捨てられたかもしれないのに、
今でも、貴方は特別だったのよってどこかで聞こえる。
バイト代で、貴方の特別のために出かける予定だったけれど、もう行かないのかな。
私は私の中で崩れる貴方に、妄想と想像の真実を探す。
何故か百均のコスメが捨てられない恐怖は、恐怖は君をどう変化させる?
『いつまでも捨てられないもの』
我ながら、実に愚かだった。
僕はクローゼットの前でため息をついた。
この間、彼女と行った旅行で、
自分の土産として買ったTシャツ。
店で一番派手で、
一番訳のわからない柄のヤツを
二人でゲラゲラ笑いながら買ったのだ。
だけど、こんなTシャツじゃあ、
宅配便を受け取ることすら恥ずかしい。
……じゃあ、何で買ってんだ、って?
そんなのこっちが聞きたいくらいだ。
とはいえ、捨てるにはもったいない。
部屋着にするしか、ないだろう。
その後、彼女が僕のうちに遊びに来た時だ。
彼女は僕の部屋着を見て、
あの旅の時と同じくゲラゲラ笑った。
やかましいのに、まぶしくて、
こっちまで笑い出したくなるような、
その彼女の顔を見て、ようやく僕は気がついた。
なるほど、だから僕はこのTシャツを買ったのか、と。
※いつまでも捨てられないもの
もう1ヶ月お世話になってる
咳き込む体と痛い横隔膜かな!!!
捨てて新しいのに変えたいよね!
とりあえず月曜日に呼吸器内科行くから
進展することを願っている
頭が重い。
捨てそびれたゴミ袋が、真っ先に目につく。
布団の中からスマホを引き寄せて、SNSを起動する。
テキトーにリテラシーの範囲内で、コメントを投稿してから、布団の中で寝返りを打つ。
今日の配信予定時間はあと二時間後だ。
まだ眠れる。
赤らんだ日を遮光するカーテンを眺めながら、そう思う。
積み重なったプラスチックの空容器と、丸めて捨てられたティッシュ。
ぐちゃぐちゃに重ねた雑誌の雪崩と、乱立する空っぽのペットボトルの間に、錠剤のゴミがぐしゃぐしゃに握りつぶされて落ちている。
足の踏み場もない狭い部屋に、すっきりと片付いた一角がある。
配信器具とカメラとマイク、それから編集用のパソコン。配信用のものを固めた、配信テーブルだ。
手元カメラの画角に入るそこだけは、きちんと片付けている。
手元のスマホの画面を見やる。
さっきのコメントに対して、さっそく返信が流れている。
取るに足らない喧嘩、誰でも書けそうな薄っぺらい一文、面倒で自己中な絡み、本人以外には全く面白さが分からない怪文書…
見るだけですえた匂いが漂いそうなコメントが、今日もネットの中を漂っている。
足首が痒い気がする。
そういえば、この布団を最後に洗ったのはいつだっただろうか。
最後に布団をあげたのはいつだったろうか。
エゴと欲でゴミ屋敷のようなSNSを閉じて、飲食店の配達アプリを立ち上げる。
閉店までに夕食を注文しておかなくては。
最近は、あんなに好きで、頼りになる存在だったはずの実家の両親からの連絡ですら、鬱陶しい。
まだかろうじて細々と縁が続いている彼氏や、学生時代あんなに一緒にいた同級生も鬱陶しい。
自分の今の生活がどうしようもなくダメな事は分かってる。
昼夜逆転、人間不信、不健康な生活、ネットびたりで区切りなしの虚の毎日…
それでも。
それでも私は、この世界を捨てられなかった。
同級生の半数が子持ちになったとSNSで気づいたあの夜も。
両親が連絡を取るたびに私を怒鳴るようになったあの夜も。
私は捨てられなかった。
布団から這い出して、パソコンの前に座る。
動画サイトを立ち上げる。
たくさんのコメント。たくさんの登録者。たくさんのいいね。
SNSを立ち上げる。
たくさんのコメント。たくさんのフォロワー。たくさんのファンアート。
だるい絡みがほとんどだけど、体にも心にも毒だけど、それでも。
それでも私はこの生活を、この世界を捨てられなかった。
スマホを横に置いて、夕飯を注文しながら、パソコンに届いているメールとコメントに目を通す。
薄暗く閉め切った部屋に、画面の光が目に眩しい。
ブルーライトを体に浴びる。
日光浴より毒々しく、でも私が一番欲している光。
これが私のいつまでも捨てられないもの。
今までもこれからも、いつまでも捨てられないもの。
正しさも、真っ当さも、幸せも、人間性すらも捨て去った私の人生の中で、ただ一つ捨てられないもの。
無機質な白い光が、顔を照らす。
カーテンの向こう側には、夜の帳が下りていた。