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( 真っ赤に染る夕暮れ時。紅葉の赤が、この景色の色を引き立たせる。地も空も、自分の足元でさえも紅く染まった瞬間。)

 咲樹は子供の頃から秋が好きだった。緑一色の夏とは違う、紅に染まると言えどもなんとも言い難い美しさに心から染められていた。子供特有の頭の上辺の方で考えた答えや、ウンウン唸ってやっとこ出たような、大人のフリした感想では到底言いきれない、そんな感覚にあった。
今思えば、秋に囚われていたのはこの頃からなのだろう。
 高一の夏。咲樹には同性の恋人ができていた。最初はただの仲のいい友達だった。親友とも呼べる距離感と共に過ごす時間の中で、咲樹は秋とよく似た感覚を得た。「この人は秋と同じで、私の道標なんだ」と思った。きっと私を助けてくれる、そう信じてやまなかった。咲樹は恋人のことを、愛していた。
 高二の秋。咲樹は恋人と別れた。一年と少し、短いような長いような、でもきっと続いた方なのだろう。大好きなところが、日を送るほどにひとつまたひとつと離れて、嫌いになっていく。まるで秋から冬になっていく寂しさや嫌悪感がひしひしと強く伝わってくるようだった。

書きかけ

9/26/2023, 10:51:38 PM