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『最初から決まってた』

目を覚ますと、どこまでもただ白い世界にいた。死んだのか。直感的にそう思って、僕は上を見上げた。上も、どこまでも白かった。
とりあえず、歩き始めた。なんとなく左の方に、足を踏み出す。まだこの段階では足ははえている。何をしていたんだっけ、とさっきまでの記憶を探るが、何も浮かんでこない。そういうふうにできているのかもしれない。
しばらく歩くと、トランシーバーが落ちているのが見えた。不思議に思い、近づき、恐る恐る拾い上げて、探る。
【ザザザザッ】
急に雑音が発され、思わず放り投げる。
【こらこら、大事に扱え?替えはないんだぞ】
トランシーバーの向こうから声が聞こえた。床に転がったまま、それは話し続ける。
【もうわかってるんだろう?お前は一生を終えてここにきたんだ。次の段階へ進む時がきたんだよ】
気のせいかと思ったが、どうやらそうではないらしい。この声は、僕の声だ。
「あ、あの、」
【声が遠くて聞こえない】
慌てて拾い上げて、顔に近づける。
「あの、あなたは」
【私が何者かなんて重要なことじゃない。今重要なのはお前が次どういう道を歩むのかを決めることだ】
「あ、ああ、そう、ですか」
なにがどうなんだろう。
【お前は何になりたい?次の世界の話だ】
来世ってそんなに自由に選べるものなのか。なら、僕は前回の選択を心の底から後悔している。
「人間以外なら、なんでもいいです」
【珍しいやつもいたもんだ】
当たりが急に明るくなった。想像していたのと、色々違う。こんなに簡単なものなのか?
【お前の来世は人間だ】
「え?」
え?
「え、え?」
【最初から決まってた。次の世界なんてあるわけないだろう。この世界はもう初めから決まってるんだ。お前はまたお前として生まれて、お前を生きて、お前を死ぬんだ。また、27年後にな】
え??

また、僕が生まれる。

8/7/2023, 1:23:30 PM