イオリ

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奇跡をもう一度

少し寒いな。昼はまだ夏っぽかったのに。

だから言ったでしょ。長袖の方がいいって。

はい、はい。


久しぶりに公園のある高台へ行ってみようということで、深夜に車を出した。

ここのところ、ギクシャクしていた。原因はわからない。わからないというのがまた、終わりをいっそう感じさせるような気がしていた。


高嶺の花だった。自分自身も周りも、なぜ、とありえない組み合わせだと思っていた。だから、いいよ、と言われた時は、奇跡ってあるんだなと心から思った。


高台に着いた。他には誰もいなかった。

車を降りて手すりの側に寄っていった。

相変わらず、ここの夜景はいいな。

うん、そうだね。

町の灯りは、もう、ちらほら。そのかわり、空には満点の星々が輝いている。

あのさ、最近、なんかあった? 思い切ってこちらから切り出した。

うーん、どうなんだろ。あるようなないような。

なんだか、変な感じだよな最近。俺たち。

うん。でも、どっちかが悪いとか、そんなんじゃないと思う。タイミングっていうかペースっていうか、たまたま合ってない感じ……。

しばらく沈黙が続いた。そしてまたこちらから口を開いた。

別れるとか、無いからな。

……そうだね。 彼女は一言、静かに言った。


そこからまた沈黙が流れた。何を言えばいいかわからない。

なんとはなしに空を見上げた。

あれ?なんとなくあの星だけ、色が違わないか?

どれ?

ほらあの星。 指でさして言った。

どれ?どの星?あれかな。どうだろ。そう言われればそうかも。あれだよね。 彼女も指さした。


彼女の本心がどんなものなのかはわからない。そうだね、とは言ってくれたけど、本当はもう、ダメなのかもしれない。


空には無限の星が散りばめられている。

僕が指した星と、彼女の指した星が同じであって欲しい。

そんな奇跡がもう一度あってくれたなら……。心からそう思った。

10/3/2024, 2:26:54 AM