『怖がり』
「お化けなんていない!そんなの非科学的だ!」
キミは必死でそう言った
でも 明らかに声が震えている
「幽霊もお化けも人間が作り出した…」
言い掛けたキミの口をふさぎ静かにするように促して物陰に隠れた
学校の七不思議の真相究明のため
卒業したばかりの学校に数人の友達と深夜忍び込んだ
キミが本当は怖がりなのは知っていた
それでも無理矢理に連れて来たのは
キミが明日 遠くの街に行ってしまうからというのもあった
今まで3年間ずっと一緒に過ごして来て沢山の思い出はあるけど…
最後にもうひとつ とっておきの思い出を
絶対にキミが忘れないような思い出を作りたかった
作戦は失敗に終わった
「お前 本当に最低だな。これで最後って日にこんな仕打ち…ずっと友達でいたかったのに…」
キミは…そのまま1人で帰ってしまった
それっきり会うことはなくなった
一度だけ「ごめん」とLINEしたが既読がつくことはなく連絡も途絶えた
あれから数年がたち
久しぶりの同窓会に出席した
もしかしたらキミが来ているかも…
そんな期待と緊張があって 途中で何度か引き返そうかとも思った
会場に行くと懐かしい顔ぶれが揃っていた
「遅いよ。相変わらず遅刻癖は直ってないんだな」
背後から聞こえた声は 懐かしい声
あの日から ずっと聞きたかったキミの声
色々な思いがこみ上げてきて
泣きそうになるのをこらえて しばらく振り向くこともできなかった
「悪かったなあ」
そう言って振り向けば キミの笑顔があると思っていた
だけど…
振り向いた その先にキミは…
3/16/2023, 10:42:32 AM