月園キサ

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#柚原くんの一目惚れ (BL)

Side:Luki Ichinose



第一志望に選んだ男子校の入学式があったのが3週間前。
約半年間付き合ってた彼女をフッたら、同じクラスになった柚原に突然告白されたのが2週間前。

…何だこの入学早々のイベントに有るまじき情報量。とは思ったけど、まぁ柚原自身良い奴っぽいし、キレるとなんか面白いし…ということで程々につるんでいる。


「…柚原ぁ、メシ行かなくていーの?俺腹減ったんだけど」

「だ、か、らっっ!!何で毎回わざわざ俺の頭を顎置きにすんだよこのノッポが!!!!」

「え〜…いーじゃん、柚原可愛いし」

「んなっっ!!…か、可愛いって言えば許されると思ってんなよ!?」

「は〜いはい、可愛い可愛い〜」

「市ノ瀬それテキトーに言ってるよなぁ!?」


…程々につるんでいる。うん、多分。

身長159cmの柚原の頭に顎をのせてぐりぐり〜っとすると、なんかイイ匂いするし毛質はフワフワで気持ちいい。

一度やるとなかなかやめられないんだな、これが。


「おいいいやめろおおお!髪型崩れるうううう!!」

「はいはいごめんごめん。後で俺が直したげるから機嫌直しなって。愛があれば髪型だって直せる俺だから」

「言ったな??よっしゃ、イケメンにしろよ!」

「え、やだ。柚原にイケメンは無理」

「何でだよぉ!!!!」


柚原は言葉ではキレていても、何故かちょっと嬉しそうにしている時がある。
…いわゆる惚れた弱み、ってやつか?

そんな柚原の反応が面白くて、いつもしている黒いマスクの下の俺の口角がちょっとニヤついてしまった。


「何でちょっと嬉しそーなの」

「はっ!?…そ、そんなに嬉しそうにしてたか俺!?」

「柚原って俺のこと相当好きなのな〜」

「…」


冗談半分でそんなことを言ってみたら、柚原が黙った。
顔も耳もみるみる真っ赤になっていっている。


「…は、はぁ??好きだけど文句あんのかよ…??」


────────キュン。

…は?何これ。キュンって何、キュンって。
何で胸のあたりがこんなムズムズしてんの?意味分かんない。

今まで他人にそこまで興味なんて持たなかったのに、この感覚が俺らしくなくてどこか気色悪いとさえ思う。

確かに柚原は今までつるんできた奴らとは全く違うタイプだけど、だからって俺がそんな簡単にキュンとくるようなタイプだとは正直思えない。

…でも、何故かこいつのことは構いたくなっちゃうんだよな。


「おーい市ノ瀬〜…聞いてんのかぁ?」

「ん?あ〜…なんか、柚原が可愛いなって思って気ぃ取られてたわ」

「それ今1ミリも思ってないだろぉ…」

「さぁね〜」


俺はあえてはっきりと答えずに、また柚原の頭に顎をのせてぐりぐりし始めた。

速くなった心臓の音が柚原にバレないように。
ちょっとニヤついた俺の表情が柚原に見えないように。


「も〜…それやめろって言ってるだろおおお…」

「かまちょしてる柚原のことを構ってるだけで〜す。愛があればかまちょの対応だってお手のもの〜」

「かまちょしてねぇし…!」


…案外、構ってほしいのは俺のほうだったりして。なーんて。

愛があれば何でもでき…る?まではまだ程遠いけど、俺は今日もこうして柚原を可愛がっている。




【お題:愛があれば何でもできる?】


◾︎今回のおはなしに出てきた人◾︎
・柚原 愁 (ゆずはら しゅう) (受けみたいな)攻め 高1
・市ノ瀬 瑠貴 (いちのせ るき) (攻めみたいな)受け 高1

5/16/2024, 11:36:47 AM