柳絮

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カレンダー


「だってそういうものじゃん。それが正しいじゃん」
「伝統より実用性を考えろよ。隣に並んでた方が諸々書きやすいだろ」
「別にまたぐような予定ないですぅ個別に書きますーう」
「ああ独り身には泊まりがけの予定なんかないよなぁ?」
「お前だって彼女いないだろ!」
「別に彼女いなくても泊まりの予定はあるし!」
「男だらけでむさ苦しいわ!」

「なにあれ」
「カレンダーのスタートは日曜か月曜か論争」
「後半関係なくないか?」




喪失感


「ない……?」
いやそんなはずない。いやいや絶対ある。あるって。あれよ。
ガチャガチャ引き出しを漁って、しまいにはひっくり返して、それでも見つからない。お気に入りの、先週も使ったはずの、髪留め。
「なんでないの〜!?」
絶対ここにしまったのに! うがががが!! 今日使いたかったのに!!
「やっば、もう出かけなきゃ!」

「ってことがあってさぁ」
「そういうの、私は妖精にあげたって思うことにしてる」
「ファンタジー」




世界に一つだけ


ずっと真っ暗だった。無味乾燥。色のない世界。ひとりぼっちの冷たさ。
それが変わったのは、たぶんあの瞬間から。
君の笑顔。柔らかい声。温かい日差し。
みんなとふざけあう放課後。一緒に食べたお菓子。くだらないことで笑って怒って泣いて。
難しいことにもつらいことにも、みんなとなら向き合うことができた。
支えて、支えられて。過ごす日常。
君はいつだって光り輝いて、道を照らしてくれた。

欲しいものは、この世界に一つだけ。




胸の鼓動


「あの、すみません! 私のこと知ってますか?」
「えっ……いえ、あの、知らないです」
じっと見つめると、彼は気まずそうに目を逸らした。
顔も声も身長も仕草も全部私の好みからは外れてる。四球だ。
なのに。
胸を押さえると、ドキドキと大きく鳴っている。
「あの、病院に戻った方が」
「何で病人って知ってるんですか?」
うっと詰まる。やっぱり。
私は記憶喪失ではない。乖離性同一性障害だ。
この人はたぶん、「わたし」の好きな人。




踊るように


「さあ、はじめましょう」
ジャラ、と大鎌に繋がれた鎖が鳴る。
痛む肩の傷を押さえながら必死に顔を上げると、腐った顔を崩しながら3体の食屍鬼が向かってくるところだった。
「ひっ」
1体が伸ばした腕の先、鎌が遮るように床に刺さる。柄を支点にブーツの踵が円を描き、その食屍鬼の首が脆くも飛んでいった。スカートとツインテールが追うようになびき、着地と同時に今度は鎌が残り2体の胴をまとめて真ん中から切断する。
静寂。

9/17/2023, 2:21:17 AM