テーマ:仲間 #28
※この物語は#20からの続編です
もし、僕がこの手を離したら。
ミデルはどこかに行ってしまうだろうか。
もし、僕がこの国の王と妃の息子と知れば。
ミデルは僕のことを恨むだろうか。
もし、僕がこの国のことを本当に受け継ぐとしたら。
どうして、みんな僕を一人するの?
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」
僕達はある建物の近くに身を隠した。
「ラクラ、どうしてここに…?」
ミデルは顔を青くしている。
ここは王宮の小屋の中。ミデルは、酷く動揺していた。
「ミデル、落ち着いて聞いてほしい。僕はー」
「坊っちゃん帰ってこないなぁ〜」
僕の声と重なって聞こえてきたのは、二人の執事だった。
「また、どこかに寄り道をしているんでしょうよ」
「またか…。王妃様も王様も、坊っちゃんのことを大事にしているはずなのに。坊っちゃんと言ったら…」
「無理もないさ。あんなにヤンチャなのだから。そういえば、王妃様が言っていたなぁ。坊っちゃんに後を継がせるのは……」
そこで執事の声が止まった。僕たちは声を潜めていた。
「どうした?」
急に話を止めた執事にもう一人が聞いた。
「いや、やめておこう。誰が聞いているかわからないしな。とにかく、坊っちゃんはあまり……」
僕は顔を伏せた。
そんなのわかってる。わかっているのに。
「ラクラ?」
執事たちが去った後、ミデルは僕に話しかけた。心配そうに眉をハの字にしている。
「ミデル。僕は君に嘘をついてしまった」
僕は、奥歯を噛んだ。本当に言っていいのか? 言ったら、ミデルは悲しむ。もしくは、僕を恨むだろう。
憎んでいる王国の王子なのだから。
そんな僕をミデルは、包み込んだ。ふんわりと花のような香りが鼻をくすぐる。
「いいよ、無理に話さなくても」
そんな優しい言葉に鼻がツンとなった。
「ミデル。僕はここを変えて見せる。だから」
僕はミデルをまっすぐ見つめた。
「待ってて。絶対に後悔させないから」
もちろん何を言っているのかミデルにはわからないだろう。しかしミデルは、僕に頷いた。
「わかった。待ってる」
ミデルは優しく言った。
僕たちは、助け合えるのだろうか。
僕たちは、信頼し会えるのだろうか。
僕たちは、仲間になれるのだろうか……。
12/10/2022, 12:43:21 PM