なツく

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草木も寝静まった夜更け過ぎ、心地好い夜風が頬を撫で擽られる。

少年は1人外に見える暗い森をただ呆然と眺めながら眠りに着く。

「起きて…起きて…」

と女性の声がする。

少年はハッと目を覚まし辺りを見渡すが誰も居ない。

「なんだ夢か、、」

もう一度眠りに着こうとするが急な寒気に襲われる。

「はっくしゅっ!!風邪引いたのかな、寒い、、」

身体がガタガタと震え急いで頭から何重にも毛布を被る。

しかし、服は冷や汗で濡れその上夜風に曝されていた為に身体が冷えきっており着替えも無かった。

少年の熱は上がり続け終いには視界が眩み意識が朦朧とし始めた。

「んッ、んんー、、」

毛布の隙間から朝陽が射し込む。

「朝、、?」

少年はいつの間にか気を失っていた。

「、ッ!?」

少年は咄嗟に毛布で身を包む。

動揺を隠せないまま恐る恐る顔を上げると、そこには肌や髪は白く毛先まで艶があり唇は韓紅色で貴賓高く、瞳は透き通る樣な勿忘草色をした見知らぬ女性が1人座って居た。

すると、女性が

「おはよ。」

と話し掛けてきた。

反射的に

「おッ、おはようございますッ!!」

と少し照れ臭さを混じえながら返す。

一瞬にして心を奪われた気がした。

「(心臓の音が煩い、、聴こえたらどうしよう、、)」

そんな事を考えながら

「あ、あの貴女は一体、、」

と女性に問い掛ける。

女性は優しく微笑み

「私は、雪女。昨日の夜、倒れてる君を助けた。」

と言ってきた。

少年の脳内が数秒間だけピタリと止まった。

「(この人は何を言ってるんだろう、、?)」

と言わんばかりの表情を浮べた。

その後、女性に家や家族、妖怪など色々な事を聞き少年は無事に村へ戻った。

村へ戻った少年はその体験を本に書き記し大切に保管していた。

それから約13年の時が流れ少年は町へと移り住み商売をしていた。

その頃には少年の記憶から女性は消え少年は1人の女性と結婚していた。

この手の話ならこの後に続くのは、

[少年は物置の整理をする為に古い物置小屋へ向かう。]と言った一文だろう。

しかし、それを日常生活に置き換えた時に少し違和感を覚える。

そして、最終的には物置小屋の中で見付かった本により記憶が蘇り少年はその場所へ向かう。

その後、女性と再会し2人は結ばれ幸せになるという樣な一見するとハッピーエンドを迎える事になるのだが、果たしてこれは2人にとってハッピーエンドなのかと疑問に思う。

そもそも、不倫になる事が許されている樣な描写。

また、残された妻はどうなるのという疑念が読者同士の論争にまで発展する事が多々ある。

[この話はその問題を解決すると共に、、、]

この後は、ご自身で感じた言葉を入れて下さい。

2人が結ばれたとて超える事の出来ない障壁が存在する。

それは寿命。

少年は老いや死がある人間。

雪女は老いも死もない妖怪。

少年の寿命と共に雪女は天涯孤独の道を往く事になる。

決して、相交えない2人が幸せになるにはどうすれば良いか。

答えは実に簡単で雪女が転生し人間となれば2人は共に生きる事が出来る。

そして、雪女は少年と別れた後に転生し再び少年の元に現れ2人は結婚していた。

魂の転生には、100から1000年と長い人も居れば半年から数年と短い人も居たりとかなり個人差があるが平均で4年5ヶ月と言われる。

目の前の恐怖から目を反らせば自己防衛に繋がるが君を待つものはその先にある。


目の前の恐怖とその先の幸福、君はどちらを選ぶ?

これは、とある少年と雪女の愛の御伽噺。

4/10/2023, 3:21:21 PM