狼星

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テーマ:Love you #103

僕たちが会場につくと、もう人がたくさんいた。司会者が話をしている。
「さぁ、始まるかな」
僕が真くんに言うと真くんはぴょんぴょんと跳ねている。やっぱりこの国では真くんは小さくて、ステージが見えないようだ。僕の視線に気がつくと跳ねるのをやめた。
「見えないのならそういえばいいのに。特等席を用意してあげようか?」
「え?」
真くんは目を丸くして僕をみる。僕だって、伊達に魔法使いやっていないんでね。
僕は"飛行魔法"を唱えると2人ともふわりと宙に浮く。
「飛んで…る」
真くんは驚いていたけど、思ったよりも落ち着いていた。なんなら、飛行魔法を僕よりもうまく使いこなせていた。体感がいいのかもしれない。
『さぁ、皆さん。お待たせいたしました。狼星さんの登場です!』
僕も真くんも…それ以外にも、来ているお客さんみんなの目がステージに向いた。
出てきたのはカクカクとロボットのように動く、少年。
『こ、こ、こ。こんにちは』
ーキーンとマイクの音。
彼も目を瞑る。会場がざわめく。
『すみません、すみません…』
彼が頭をペコペコと下げる。大丈夫かな…。心配して見ていると、彼が手を上げる。そしてパチンッと指を鳴らした。
『あ、あ。これで直ったかな…』
彼の声がクリアに聞こえる。何が起きたのか最初は分からなかったが、これは彼の魔法らしい。
『すみません。紹介に上がりました、狼星です。今回はこのような披露宴を開いていただきありがとうございます』
彼はスラスラと話し始める。魔法を使ったときからなんだか雰囲気が変わった。
『この魔法は僕の友人の魔法で…。僕は魔法を使えません』
魔法を使えない…ということは普通の人間ってことか。
『この国では、人間はもちろん。いろんな他種族の者たちにとっても住みやすい世界です。だから僕は、この国の事をもっと他の国の人にも知ってほしいと思い、この作品を書かせていただきました。
他国も、この国のように種族が違うからと言って差別したり、暴力したりすることなく、平和で誰とでも気軽に話せる。そんな国にしていってほしい。この国のように』
そう言うと彼は両手を握り、目を瞑った。彼は本当に平和を願う純粋な少年なのだろう。僕は彼がどんな話を書いたのか、凄く読みたくなった。早く書店に本が出されないかと、待っている自分がいる。
『でも、僕はこの国の王様に一番お礼が言いたいです』
彼の言葉に僕は瞬きを何度かした。
『まだ、お会いしたことはないのですが、とても素敵な方だと聞いております。きっと、言葉通りでしょう。彼がこの国を作り、今日まで築き上げてきたことは、この国のみなさんにとっても、かけがいのないものだと思います。僕も同じです。こんなにも、平和でみんなが助け合える国を作ってくださり、ありがとうございます』
彼はこの披露宴に、国王である僕が出席していることに気がついていないのだろう。
こんなにも率直に言われると「Love you」と告白されているように感じてしまう。顔が熱くなっていくのを感じた。こちらこそ、ありがとう。僕は心のなかで思った。本当だったら今すぐにでもステージに降りて、この気持ちを伝えたかったのだが、真くんを1人にはできないし、なによりお忍びできているということを忘れてはいけない。だから、心のなかで心を込めていった。
〔ありがとう、狼星くん〕と。


こんばんは、狼星です。
今回、自分の作品に自分を出すという良く分からない展開になりました。
凄く不思議な感じでした。
狼星の出番は終わりましたが、もう少し続くのでお楽しみに。    
それでは。

2/23/2023, 1:18:14 PM