何故鳥は飛べると思うね。薄っぺらな笑顔を浮かべて青年は私に問うた。鳥は翼があるから飛べるのだと言うと青年は嘲るようにケラケラ笑い、私の不快指数を少なからず上昇させた。
君、阿呆だろう。例え君に翼が有っても飛べやしないね。
私は声を少しだけ荒げて反論した。答えが曖昧な問を人にぶつけるだけぶつけておいて、阿呆呼ばわりとは気に食わない。じゃあ何故鳥は飛べるのだ!反響音は私の事を指さして笑うように耳に残り続けた。
鳥は、帰る家が有るから飛べるのだ。いやすまない、言葉が悪かったね。目的地が無くとも飛べはするが、帰着できない飛行はただの放浪だ。
それだけ言うと青年はたばこを吸ってくると残して、それっきり帰ってこなかった。私にはなんとも後味の悪い話だった。それはまるで、私を揶揄しているようで。
8/21/2023, 6:20:33 PM