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日差し

「太陽、気持ちいいね。」
あなたがそう言った。

わたしは、肯定も否定もしなかった。
辺りの景色を眺めるふりをして、本心では全く違うことを考えていました。
ですから、恐らく何かしら適当な返事はしたのだと思いますが、実はあまり覚えてはいないのです。
何せ、その日はたまらなく暑くて、普段殆ど外になど出ないわたしには、正直苦痛でした。

一分も経っていなかったと思います。
あなたは突然、帰ろうかと言ってわたしの手を取りました。
きっとあなたにだけは、わたしのお芝居は見透かされるのだろうと思うと、少し擽ったい様な、妙な気分になります。

わたしは、大変な小心者でして、相手に都合のいい態度を勝手に取ってしまう癖があります。
学校のお友達や、先生等には、普段、滅多にそれを悟られることはないのです。

多分、わたしが弱いからです。
或いは、あなたが、あまりに優しい人のせいです。
ええ、きっとそのせいです。

だって、出掛けたいと言い出したのは、わたしのほうなのに、あなたは文句一つ言わずに、嬉しそうに私の介抱をしたのですよ。

どうしてあなたは、そんなに私の心の事がわかるのですか。
わたしも、あなたの心が知りたいです。

ほんの少しの間でしたが、あの時、二人で日向に並んで座っていた時、あなたはどんな事を考えていたのでしょうか。
わたしは、あなたのことを考えていました。

ああ、こんな事、直接口には絶対にできませんね。
あなたが、わたしのことを考えていた根拠なんてありませんから。

でも、そうでしたら、嬉しいです。

7/2/2021, 4:18:50 PM