……まあお手本のような毒親との母子家庭だった俺は、あの女が逮捕されるまで口にするのも憚られる虐待をされていたんだけれど。
心の拠り所だった幼馴染みに助けられて、精神的にも回復したと思った矢先、アンタは俺達の輪の中にすんなりと入ってきて。
嗚呼、いや、それだけなら良かった。別にアンタのことは嫌いじゃなかったから。
でも。
クリスマスの日、何気なく作ったカップケーキを渡したとき、彼女は酷く喜んで。
そして誰よりも、何よりも酷いことを言った。
「ありがとう。……なんだか、サンタさんみたいだね」
自分は貧乏だったから、サンタなんて来たことない、と。
ふざけんな。
俺だって来たことねぇよ。
そこそこ金持ちの俺の家とは対照的に、彼女は貧乏な家系の生まれだった。
けれど、それでも。アンタは愛されてる。いくら生活が苦しくたって、家族からの愛を知ってる。
金持ちの家で育ったけれど、俺はそんなの知らないから。…だから。
それがどれ程幸せなことなのか、蝶よ花よと大事にされてきたアンタには分かんないんだろうな。
自虐気味に笑う彼女を、あくまでも少しだけ、憎しみの籠った目で睨み付けた。
8/8/2023, 3:45:10 PM