理性

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#だんだん理性が溶けていく話

■冷たくするのをやめたくない人の場合


〈理性が溶けた後〉

その日、彼女と彼は静かな公園を歩いていた。
春の風がそよぎ、木々の間を抜ける柔らかな光が
二人を包んでいた。ベンチの近くに立ち止まり
彼が「ちょっと座ろうか」と言うと
彼女は小さくうなずいて並んで腰を下ろした。

ふと、彼は鞄から一通の封筒を取り出し
彼女に差し出した。
「これを君に。」

彼女は驚きの表情を浮かべ
「何それ?今さら手紙なんて…」
とそっけなく言いながらも、手を伸ばして
封筒を受け取った。彼女の好奇心を隠しきれない様子に
彼は穏やかな笑みを浮かべていた。

封筒を開けると
中には彼の丁寧な字で書かれた手紙が入っていた。

「君と出会ってから、いろんなことが変わった。
君が冷たいって言われるその一面も
実は優しさや繊細さの表れだって気づいたよ。
僕にとって君は特別なんだ。
これからも一緒にいろんな景色を見ていこう。」

彼女はその文を何度も読み返し
徐々に顔が赤らんでいった。
「…こんなの、普通に言えばいいじゃない。」
とつぶやく声には、照れと嬉しさが滲んでいた。

彼は少し照れくさそうに頭を掻きながら
「直接だと君、からかうかもしれないからさ。
でも、どうしても伝えたかったんだよ。」と話した。

彼女はため息をつきながらも
封筒を丁寧にカバンにしまい、視線を少しそらして
「…まあ、悪くない内容だったけど。」とつぶやいた。
その顔には微かに笑みが浮かんでいた。

鳥のさえずりと春風が二人の間を包み込み
公園の道には、彼女の心に芽生えた新しい温もりが
静かに刻まれていた。

終わり

3/21/2025, 12:54:02 PM