杏野 天音

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「寒っ…」
屋根をオープンにして走るのもそろそろ辛いかな?
でも、せっかく紅葉狩りを楽しみに来たのだから、もう少し我慢して走ろう。
父から譲り受けたNA型のロードスター君は、もう私の相棒。
最初はおっかなびっくりだったけど、今は一体感を感じられて気持ち良い。

駐車場に着いて遊歩道を歩く。
ここは地元の名所。椛や楓が紅く染まっている中に滝が見える。
美しい白滝は私の心の澱みを洗い流してくれる。
紅と白のコントラストに目を奪われる。
遠くから木々に混じって人々のざわめきを感じる。

そろそろ帰りますか。場違いだし。
まだ独りでいいかな。

紅く輝く相棒君の姿が見えてきた。
なにかが起こらないかと少し期待するけど、そんな都合のいい話はないよね。
キーを回してエンジンをかける。
ヴォン!
相棒君、もうしばらく付き合ってくれる?
暖かくなってきたし、もう少し秋の風を感じたいの。
相棒君は私の気持ちに寄り添うように走り出した。
私は風になった。

-秋🍁-fin

9/26/2024, 1:42:11 PM