「お姉さん、やっと見つけた」
まだ追いかけてきたのか、この少年は。10歳になったばかりという彼は、まだ声変わりのしていない声でお姉さんと呼び掛ける。君の見ている私と本当の私は違うというのに。なぜそこまで純粋に私を慕っているのか。
「ダメだよ。お姉さんは悪い人なんだ」
そうだ、私は悪人。ヒーローとして誰かを守る使命を背負いながらも、大嫌いな人はそのまま見殺しにしてしまうような人なのだから。
そんなに綺麗な目で見ないでくれ。私はヒーローじゃない。君のように誰かのために戦えない。君と一緒にいてはいけないんだ。
「それでもいい。だって、お姉さんは僕のヒーローだから。仲間なんだから」
仲間、そう言ったこともあったよなと思い出す。独りぼっちになってしまったと泣いている彼に、そんな言葉をかけたような……。
不器用に私の頭を撫でながら、彼は笑った。
「だから今度は、僕がお姉さんの仲間になる。ずっと一緒だよ」
その笑顔に救われてしまうんだよな、と思いながら、頬に流れた涙を拭った。
《仲間》
12/11/2022, 7:02:05 AM