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「失われた長い時間」

中学生は、今まで無音の世界で生きて来たので、
音と言う不思議な体験に魅了されていました。

「おや?ずいぶん早くに天国に来たんだね」
中学生は、生まれて初めて聞く言葉に驚きました。
「驚かなくて良いんだよ。
人間界でやり残した事は無いかい?」
中学生は内容が理解出来ない
老人の言葉にただ怯えるばかりでした。
「お前さんには勉強と言う物が必要じゃの。
人間界で勉強を頑張り」
中学生は人間界に戻されました。


中学生は目を覚ますと、
駅のホームに立っていました。
あの心揺さぶる振動はどこに行ったんだろう?
無音の世界で中学生は呆然としていました。

家に帰ると、お母さんに何発も平手打ちをされました。
そして、勉強漬けの日々に戻りました。


お母さんは、中学生によく
「アンタは不細工だからアイドルになれないし
風俗でも生きられないよ」
「不細工は勉強が取り柄だけど、
アンタは馬鹿だし障害者だから
普通の人の100倍以上努力しないと駄目」
「小学校の勉強すら出来ないんだから
大人になったらお金を稼げなくて餓死しちゃうよ」
と、言われていました。

勉強する意味あるんだろうか?
勉強しなきゃ殴られるから勉強してる。
中学生は疑問に思いながら勉強していました。

「生きるの意味は何じゃ?」
中学生の頭の中であの老人の声がしました。
「生きる?生命活動を維持する…
って辞書に書いてあった」
「生きるは辞書には乗り切らない程奥が深いんじゃ。
よーく考えて、自分なりの答えを出すんじゃ」
「待って、ヒントを教えて…」
老人の声はプツリと消えました。

中学生は生きると言う意味を考えました。
でも、漠然とし過ぎていて何も思いつきませんでした。

生きるって前に進む?
生きるって時を動かす?
生きるって食べる?
生きるって息をする?

中学生は自分なりに考え始めました。

10/21/2021, 11:42:19 AM