なツく

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高校を卒業して以来、夕弦と会うのは数年振りで私の胸は、高鳴る気持ちで一杯になる。

朝早くからいつもより念入りにお洒落をして家を出る。

涼しい微風が優しく頬を撫で、木の葉を揺らしそのの道を抜けると待ち合わせ場所の噴水の前に1人の女性が立って居た。

すると、その女性がこちらに話し掛けて来た。

「久しぶり。三奈子だよね?」

自分の名前を呼ばれた途端、やっとその女性が夕弦だと判った。

私は、あまりの変わりように言葉が詰まりただ、夕弦に

「綺麗だね。」

と、遣い古された言葉を返す。

鍵を掛け心の奥底に閉まっていた想いが、懐かしい思い出と共に走馬燈の樣に蘇る。

「この本おもしろいから読んでみてよ!」

「えー、私小説ちょっと苦手、、漫画とかは〜?」

「まぁまぁ、良いからとりあえず読んでみてね!今度感想聞かせてよ!またね〜!」

「(あの本、夕弦読んだかな、、)」

あの小説を夕弦に薦めたのは私。

あの頃は、恋愛に無頓着だった夕弦に恋愛小説を薦めたら少しは気が付いてくれると思っていた。

でも、無理だった。

夕弦は、特に何も変わらなかった。

勝手に好きになって、

勝手に期待して、

勝手に幻滅して、

勝手に逃げた私は、自分自身を正当化しようと全てを疑い否定した。

他の人も、この世界も。

そして、私自身も。

そうやって、ずっと殻の中に閉じ籠りながら生きてきた。

私が、ずっと夢の中に居たらどれだけの人が救われるのだろう。

私が否定し傷付けてきた人達は、私を許してはくれない。

「(あぁ、また、、)」

「みなこ〜聞いてる〜?」

「あーごめんごめん。それで〜なんだっけ?」

「B組に居た一花ちゃんって子ね、今ファッションモデルやってるみたいだよ〜あの子昔から綺麗だったし人気だったもんね〜。」

と、夕弦が話す。

「へーそうなんだ〜夕弦も綺麗だからモデルとか似合いそうだけど笑」

「(また、こんなちっちゃい事で嫉妬してる、、)」

「(別に、私のじゃないのに、、)」

あの頃の想いがより強くなる。

「私は綺麗じゃないからこういうのはいいよ、」

と、夕弦は耳を赤くしミルクティーを啜る。

「かわいい。」

「ありがと。三奈子もかわいいよ〜!」

「そういう、ことじゃないのに、、」

と、俯き小声で言う三奈子の瞳から涙が零れる。

「え、?三奈子、大丈夫?」

と、背中を摩り慰めようとする夕弦の手を振り払い席を立つ。

「なんで、、なんで分かってくれないの、?なんで、気付いてくれないの、?ねえ、なんで?教えてよ、なんで?」

涙で顔はグチャグチャで、声は震えガサガサになり浮かんだ言葉を羅列する姿を見られて正直、私はこのまま死んでも良いと思った。

夕弦が優しく包み込み

「気付いてあげられなくてごめんね、ごめんね、、」

と、耳元で繰り返す。

夕弦の頬にも涙が零れる。

暫くその場で抱擁した後

「ううん、夕弦ごめんって謝るのは私の方だよ。ずっと1人で勝手に期待してた私が悪い。だから、ごめんね。」

と、三奈子は夕弦に言い、今までの気持ちを包み隠さず夕弦に伝えた。

それを聞いた夕弦は

「へへっありがと。なんか安心した。嫌われてなくて良かったー!」

と、純粋な笑顔で言った。

「あの子達、今頃何してるんだろうね。」

「そうですね、」

「向こうでも喧嘩せず仲良くしてると良いなぁ。」

「仲山さんと三奈子さんなら大丈夫だと思いますよ。」

「ふふ、そっか。中入らないと風邪引くよ。」


そして、今日もまた目を覚ます。

その日、宙は藍色に染められそこに泛ぶ星々は光を失った。

4/19/2023, 8:12:23 PM