「 おかえりなさい 。詩子 。 」
アナタがそう言って 、任務から帰ッて来た私を迎えた時 、
私はコレが夢だと確信した 。
「 …ただいま 。お姉ちゃん 。 」
アナタの温かい微笑みに応えるように 、私も笑みを作る 。
「 今日は 、詩子の大好きなローストビーフよ 。
あと 、お味噌汁もあるわ 。それから 、デザートの苺も 。
…ふふ 、どう?お腹 、空いてる? 」
アナタは 、心底嬉しそうに私を見つめる 。
私と同じ焦げ茶色の瞳 。
でも 、アナタの瞳の方は 、色がとても澄んでいる 。
それはアナタの純粋さを表していた 。
何も知らない 、無垢で優しい瞳 。
───これが夢でなければ 、どれほどいいだろう 。
寧ろ 、今まで生きていた現実が夢であれば 、
どれほど幸せだろうか 。
「 …詩子 、?どうしたの? 」
黙り込んでしまッた私を心配するように 、
アナタは私の顔を覗き込んでくる 。
私はその時 、一体どんな表情をしていたのだろう 。
自分でもよく分からない 。
でも 、アナタが酷く驚いた顔をしたのは覚えている 。
「 ごめん 、お風呂…先でもいいかな 。 」
声が 、震える 。視界がぼやける 。
アナタの奥にある食器棚が 、白く滲んだ 。
「 …詩子 。 」
アナタの声が 、自分の耳に柔らかく届く 。
その瞬間 。体が持ッていかれる感覚がして 、
その直後に 、あたたかい落ち着くものに包み込まれた 。
それが抱き締められていることだと認識するのに 、
数秒ほどのラグが生まれた 。
「 ……おねえ 、ちゃん… 。 」
言葉を発したら 、涙がとめどなく溢れてきた 。
涙を流すなどいつぶりだろうか 。
「 …いいのよ 、泣いて 。詩子は弱くていいの 。
私が 、お姉ちゃんが 、守ッてあげるから 。 」
もう私は守ッてもらえないんだよ 。
もうお姉ちゃんは守れないんだよ 。
咄嗟にそう言えなかッた 。
ただただ 、頷くことしか出来なかッた 。
「 おねえちゃん… 。おねえちゃん… 。 」
私は号泣した 。声を上げて泣いた 。
それをアナタは 、優しく受け止めてくれる 。
嗚呼 、ずッと 、目が覚めるまで 、このままで ── 。
〝 目が覚めるまでに 〟#1
8/3/2023, 5:55:08 PM