奈緒

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『泣かないで』




遠距離恋愛をしていた。


私の彼氏は泣き虫だった。


私と一緒にする一つ一つに感動して、


会った時も、遊んでる時も、帰る時も泣いていた。


そのたんび私は「泣かないで、また会えるから」


と慰めていた。


付き合ってから4年とちょっとが経ち


彼も私も社会人になり。


会う頻度が高くなった。


相変わらず彼は泣き虫だった。


「泣かないで、だいじょうぶだよ」


「また会えるから。」


次に会うのは2ヶ月後。


2ヶ月に1回、片方の家でお泊まり会をする約束。


次回は私の家だった。


2ヶ月が経って、彼がこっちの県に来た。


「おーい!!!」


駅からでてきた彼が、こっちを見て手を振った。


仔犬みたいだなぁ、と微笑みながら手を振り返した。


その瞬間


彼にトラックが突っ込んだ。


ドン、と鈍い音が鳴る。


周りが叫ぶ中、私は何も出来ず、その場に立ち尽くした。


動けたのは5分後くらいだろうか。


紙袋を片手に手を振る彼が脳裏に焼き付いていた。


「ッッッッッ!!」


救急車の音で気が付く。


救急車に彼が運ばれていく。


私も乗った。
































しばらくして、彼が病室に入った。


「回復は難しそうですね、」


「身体の損傷が激しく、さらにショックで心臓が止まっています。」


私は絶望的だった。


さっきまで満面の笑みだった彼ともう喋れないなんて。


死ぬことも考えた。


でも、もしかしたらまた話せるかもしれない。


そう思って見舞いを欠かさなかった。


ある日のことだった


彼が目を開けて、私に話しかけた。


「ごめん」


私は泣いた


彼が謝ることじゃないのに。


とか、


目を覚ましたのね、という嬉しい気持ち


だとか。


涙を堪えるのが辛かった


「わ、たし、こそ、ごめんね、ッ」


実はあの日、私が早く会いたいといって早い新幹線で来てもらったのだ。


「わたしが、、ッ早く会いたいなんて言わなきゃ、」


色んな感情が混ざって涙が溢れ出た。


すると彼は微笑みながら、


「泣かないで、ぼくは君が泣いてるの、すきじゃない、」


そう言いながら、目を閉じた。


「君の笑顔は、だいすきだよ」


それから、もう目を開けることは無かった。























あれから5年が経ったけれど。


彼よりいい人が見つからなくて。


12月が近づくと、毎年思い出す。


彼の墓参りに行くと、彼が言ってるように感じた。


『泣かないで』

11/30/2022, 10:57:56 AM