柳絮

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麦わら帽子


「マリーゴールドじゃねぇよ!」
「何も言ってないよ!?」
「思ってるかなと思って」
「思ってないから。腕が伸びそうだなとしか」
「海賊王じゃねぇよ!」
「うん、まだね、もうすぐだね」
「そういうことじゃない」
「あとはカカシとか」
「写輪眼じゃねぇよ!」
「そっちじゃない」
「脳みそ詰まってるわ!」
「そう、それ!」
「わかってもらえて嬉しいって顔やめて」
「でも似合ってるね。どこで買ったの?」
「ワークマン」
「ガチのやつ」




終点


ふと目を覚ますと、目の前に大好きな人がいた。
大きな窓から差し込む夕日に染められて、オレンジがかった視界の中、がたんごとん、心地よい揺れにされるがまま、向かいの席に座っている。
ああ、なんだ夢か。
ほかに誰もいない車両。眩しくてよく見えない窓の外。遠くを見つめるその瞳が、不意にこちらを向いた。
「もう降りないと」
立ち上がって、頭をポンと撫でてくれる手。
促されるまま電車を降りると、涙がポロリと落ちた。

8/12/2023, 10:00:56 AM