【 夜景 】
同棲している彼女とケンカをしてしまった。
それも本当に些細なことで。
俺は頭に血が上り思わず家を飛び出した。
行く当てなんてない。ただ当てもなく歩いていると、無意識に丘の上にある展望台へと来ていた。
展望台から見える夜景は俺の心象とは真逆で落ち着いて見えた。空を見れば星が輝き、下を見れば車のライトやお店の光、そしてそれぞれの家の光が続く。
この夜景を見て自然と俺の心は落ち着きを取り戻す。
「なんで頭に血が上ったんだっけ……」
さっきまでの苛立ちが嘘のようで、俺自身も驚いていたりした。
初デートで彼女と来た展望台。
一人でいると彼女の顔がチラチラと思い浮かぶ。
あぁ、そっか。
「ここは一人で来る場所じゃない。大事な人と来る場所。そしてまた一緒に来たいと思える場所なんだ」
ケンカをして、ここに来て、今更思い知らされる。
彼女が隣にいるのは“当たり前”じゃない。
彼女がいるのは“当たり前”じゃない。一緒にいる事が当たり前と思ってはいけない。だってまだ「彼女」だから。
ううん。「彼女」から「妻」になっても隣にいることが当たり前って思ってはいけない。一緒に居てくれてありがとうっていう感謝を忘れてはいけない。
「早く帰らなきゃ……!」
“ごめん”って伝えなきゃ。
“いつもありがとう”って伝えなきゃ!
“これからも一緒にいてくれ”と伝えるんだ!!
人生の最期まで一緒にいたいと思ったキミを失わないように、伝えたい。
「ごめん!!大好きだ!!」
2024.9.18 #4
9/18/2024, 12:10:30 PM