今日だけ許して
「ごめん、ごめん、今日だけ許して」
またこの会話だ
「今日だけ許して」
この言葉はもう聞き飽きた
私は怒りと共に家を出た
何時間たっただろうか
携帯の電源は切れ、凍えるほど寒くなった
重い足を動かし仕方なく家に帰った
キッチンの明かりだけがついている
ドアを開け覗くと美味しそうな香りがする
しかし作っている人はいない
部屋に入る
ソファーにエプロン姿のままで寝ている彼がいた
慣れないことをするからだ
なんだ、さっきまでの怒りはどこへ行ったのか
こやつの寝顔を見ていると謎に安心感を得られる
仕方ないから毛布をかけてやった
仕方ないから完成している料理にラップをかけてやった
仕方ないから今日だけは許してやろう
10/4/2025, 10:47:46 AM