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「とんち王を目指す子」

休み時間、男の子は友達と野球をしようと運動場へ行こうとしていました。だけど、下駄箱で人だかりが出来ていたので、外に行くことが出来ません。

「何があったの?」
「人だかりで通れないよ!」
「どうすんだよ、休み時間終わっちゃうじゃん!」

人だかりのみんなは、目的地に行こうとする人、興味深々でその場にいる野次馬の人、泣いている女子を慰めている人で混乱状態でした。

「先生、呼んで来る!」
一人の児童が先生を呼ぼうとすると、
「先生は呼んじゃ駄目!」
と言う一声で、その場は更に混乱してしまいました。
「先生呼べよ!」
「何で先生呼ばないの?」
「怪しい匂いがするぞ?」
ここまで騒ぎが大きくなると、もう収集が尽きません。

「何があったんだよ?」
男の子は、泣いている女子を慰めている女子に事情を聞きました。
「この子、担任の先生からイジメられてて、修学旅行に行けなくなっちゃったんだって」
慰めている女子は、泣いている女子の方を見て言いました。
「先生は、流行り病で休んでたこの子だけ保護者の紙渡さずに自動的に欠席扱いにさせたんだよ」

「うわっ、ひでーな…そうだ!」
男の子は、職員室に向かって行くテレビ局の取材の人を見かけて思い付きました。
「その担任って、この局で好きな番組とか無いか?」
男の子は、慰めている女子に聞きました。
「あ!あるある!確か…」
慰めている女子は、男の子にその先生の好きな番組を教えました。
「よっしゃ!いっちょ行って来るぞ!」
男の子は、テレビ局の取材の人の所へ行きました。

一ヶ月後、修学旅行の日。
泣いていた女子の担任の先生は、大慌てで学校に向かっていました。
「何で、楽しみにしてたドラマが、急遽、放送枠が変わってしまうのよ?おかげで寝過ごしてしまったじゃない…」
学校に着き、バスが出発し始めている光景を目の当たりにした泣いていた女子の担任の先生は、必死で修学旅行のバスを追いかけていました。
「待ってー!」

「無視は良くないって、どの先生も言ってるもんな」
男の子は、修学旅行のバスを見ていました。

2/18/2022, 11:07:56 AM