【やりたいこと】
安楽椅子に身を沈め
枯れ木の手にはパイプが収まる
最初から身体の一部だったかのような
そのパイプから踊る白い煙
やがて老人は語りはじめる
大地の底から響いてくる暖かな声は
しかし何と言っているのか聞き取ることができない
やがて老人の声が寝息に変わりはじめ
白い煙が夢へといざなう
少年の日へ
少年は空をみていた
暗い夜空に浮かぶ白い月
少年は妹に云う
僕はいつか宙へ行く
あの月に立つんだと
そう語る少年の目は満天の星よりも輝いていた
妹の小さく暖かな手を握りながら
少年の夢はきっと叶うと信じていた
やがて老人は目を覚ます
白く濁った目は
それでも輝きはあの日のまま
夢が現実で現実が夢なのか
握ったパイプから白い煙を吐き出しながら
あの日の月を、妹の幼く小さな手を思う
きっと遠からず夢は叶うだろう
そんなことを思いながら老人はまた
夢の中へ
6/10/2024, 10:25:00 AM