「となり、いい?」
自分でも何故声をかけたのか分からない。
でも、公園で見かけたその子は酷く辛く今にも泣きそうな顔をしていたので何となく放っておけなかったのだろう。
その子は特に何も返してこなかったが、特別嫌な顔はされなかったし自分の隣に人1人分座れるスペースを空けてくれたので遠慮なく座った。
特に何を話すわけでもなく時間は過ぎた。
ただ一言だけ、
「親が離婚しちゃったんだ」
とその子が言ったっきり。
次の日も、その次の日もその子はそこにいた。
毎回僕が来る度に1人分空けてくれる。
僕がそこに座る。
ただそれだけだった。
会話はない。
何日か経ったある日、その子が急に口を開いた。
「、、可哀想だと思ってる?同情してる?」
「うーん、いや別に?」
「君の気持ちは君にしか理解出来ないから、可哀想だなんて軽々しく思えないかな」
「!、そう、、」
僕の言葉にかなり驚いた様子を見せた。
続けてポツリポツリ少しづつだけど確かに言葉を発する。
「周りの友達や大人がね、私のこと可哀想って」
「そう言って気を使って優しくしてくれるの」
「でも、それが辛いんだ」
僕は黙ってその子の話を聞く。
「お父さんとお母さん、親がちゃんと2人ともいてっていうのが1番幸せかなんてきっとその人によって変わるのに」
「少なくとも私はね、今の方がお母さんも前より心から笑ってて幸せなの」
「それにさ、同情って残酷だとも思わない?」
「それって結局、他人が幸せかどうかを勝手に自分のものさしでで判断して決めて、それを相手に押しつけてるんだよ」
そこでその子は言葉を一度切った。
そして少し躊躇った後に、僕にこう尋ねた。
「君はさ、私のこと可哀想って思ってないなら、同情してる訳じゃないなら、どうしていつも隣に座ってくるの?」
「特に理由なんてないよ」
「だだ、、君は僕が来るといつもちょっとだけホッとしたような顔するからさ」
「それだけだよ」
「!」
その子はだいぶ驚いた顔をしていた。
その様子を見て僕は続ける。
「君が言うように同情っていう行為が押し付けがましいのよくわかる」
「だし、相手には悪気がないのも難しいよね。」
「だからね、同情っていうより寄り添うってことが大事なのかなと思って」
「僕は君に可哀想な子ってレッテルを押し付けるんじゃなくて、君の苦しみに寄り添いたい」
「、、ありがとう」
その子は少しだけ顔を伏せて言った。
最初は変なこと言っちゃった!?た思ったけど、どうやら違うらしい。
髪から覗く耳が少し赤くなっていた。
「全然いいよ!」
再びその子が口を開こうとする。
「あのさ、あ、えっと、、」
何かを言おうか言わないか迷っていたようだか、、決めたようだ。
「もし君が悲しかったり苦しかったりする時は、私が君の心に寄り添いたい!、、です」
ほんのり心が温まっていくような気がした。
でも、きっとそれだけじゃない。
「うん、ありがとう」
僕たちは打ち解け合うと同時に、
お互い恋心を抱いてしまったらしい。
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『同情』
2/20/2024, 5:22:27 PM