神永

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 駅のホームで電車を待ちながら、ふと空を見上げた。どこまでも広がる青い空が、私の心に静かにしみわたっていく。

 今日は雲ひとつない快晴だ。都会の中で、こんな広々とした空を見るのは久しぶりかもしれない。いつもはビルに囲まれて空を見上げてもその一部しか見えない。
 でも、今日は違う。この広がりが、私をどこか遠くへ連れて行ってくれるような気がした。

「どこまで続いてるんだろう…」

 思わずつぶやいてしまった。この青い空は、私にとっていつも手の届かないもの、自由の象徴のような存在だ。
 仕事に追われ、毎日の生活に縛られている私には自由に息をつける時間なんてほとんどない。でも、こうして空を見上げると、その無限の広がりに少しだけ自由を感じることができる。

 学生時代のことが頭をよぎる。あの頃、私はよく遠くへ出かけていた。山や海、広がる空――どこまでも続いているかのように感じた未来も、あの頃は手に届くような気がしていた。けれど、今は違う。仕事に追われる毎日、夢中で走り続けるしかない現実。あの頃感じた自由は、どこへ消えてしまったのだろう。

 遠くから電車の音が聞こえた。忙しい現実が私を引き戻す。でも、その前にもう一度だけ空を見上げた。青く澄んだ空が、どこまでも続いている。

「いつか、またこの空を追いかけられる時が来るかもしれない」

 そう思いながら、小さく息をついて、やってきた電車に乗り込んだ。

 青い空はいつだってそこにある。それに気づくかどうかは、私次第だと感じながら。


【どこまでも続く青い空】

10/24/2024, 5:27:04 AM