「真夏の記憶」
何気ない帰り道だった。
ランドセルを背負いながらも、
十二歳というかなり大人らしいような気がしている
自分達に酔った私達は、
今日も誰よりも世界を知っているような目で
全てを見つめる。
陸部帰りというだけあって、
帰り道といえど人が少ない。
隣の由芽は暑さにやられて
今すぐにでも溶けそうだった。
いつもの信号機。横断歩道。
その鮮やかな赤いランドセルと、
ヘルメット裏についているシールで、
私はそこにいた女の子が、
私の親友である律希だと分かった。
「律希!なにやってんのー?」
「ぁ!莉々花と由芽じゃん!見て見てっ!!」
そう、自慢げに笑う彼女の手元にあったのは
紛れもなくモナ王だった。
「えぇっ…なんで!?寄り道でもしたのっ!?」
「いや、交差点でさ!?倒れているお婆さんが
いたから助けたの!そしたらそこのコンビニで
アイス買ってきてくれて!!」
「やばぁっ羨ましいっ!!」
「でしょぉ!?二人もアイスいる!?」
「えっほしー!」
「神様仏様律希様。
私にアイスを恵んでくださいましぃっ!」
「いいよー!あげるー!」
そう言って、モナカの割れ目の一部分を貰った。
その断面で、私はそのモナ王が抹茶だったことを知る
帰り道、多分校則違反だけど
3人で食べたモナ王は、この世で一番美味しかった。
どうせなら、味はバニラが良かったけれど。
───
割と実話
8/12/2025, 11:48:17 AM