M氏:創作:短編小説

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雲一つ無いような
抜ける程晴天の秋空
日が注げば暑くさえ思うのに
影に入れば寒さを覚える

“哀しくなるくらいには好きな季節よ”

笑う貴女を思い浮かべては目を伏せた
何をしてるのかを私に話す事無く
“大人になったら教えてあげる”と
最期まで柔らかな唇に指を立てて
私への秘密を重ねてた貴女

太陽を包む空のような髪色
陽の光を反射して淡い緑
貴女が撫でた髪を
貴女が結わう三つ編みを
同じように触れてくれる人も居なくなった

私の家族は貴女だけ
そう言葉にするのを貴女は拒んでいたけど
実際そうだと思う

ボロボロの肌で地を這う私を
剥がれた爪で地を掻く私を
救ってくれたのは貴女だ

駄作と眉を寄せた人を
哀れと息を吐いた人を
忘れさせてくれたのは貴女だ

言葉も
文字も
感情も
温度も
全部貴女が教えてくれた

“貴女は私に恩を覚えなくていいの”
“生きたいように生きなさい”
“恩にも優しさにも縛られちゃいけないわ”

貴女の居ない世界は今日も私を受け入れてる
貴女の代わりとでも言うように

太陽が朝を伝えてくれて
風が頬を撫でてくれて
花が季節を教えてくれて
月が1日に別れを告げてくれる

貴女の居ない世界はこんなにも優しいのに
貴女の居ない世界はこんなにも寂しい

『ベル!そのガキ捕まえろ!』
『ボクの名前ガキじゃないも〜ん!』
『良いよ!愛藍ちゃん!撮影は任せて!』
『テメェ撮ってる暇があったら捕まえんの手伝え!』
『ライオンくんそんなカッカしてたら禿げちゃうよ〜?』

そんな想いさえも掻き消す賑やかさ
迷惑と有り難さが交じる空間

「人が物思いに耽る時間くらい確保しておいてくれる!?!?」

いったいこの空間は一日に何回怒声をあげさせるのだろうか


題名:過ぎた日を想う
作者:M氏
出演:🔔(💎🍼📸)


【あとがき】
過ぎた日を想う…題材にすると悲しげな雰囲気がありますよね
人間の大半が嬉しい出来事より悲しい出来事を覚えると言います
M氏もその大半に居ます
過去を想い浮かべても悲しい事は鮮明に浮かぶのに嬉しい事は何処か他人事に感じます
でも全て“過ぎた日”ですので
過去の出来事ですので
出演してくれた彼女のように
今は思いの外平穏に生きていますよと
悲しい出来事やそれを前にする幼い自分に
ソッと伝えられれば良いなと思います

10/7/2023, 9:55:12 AM