狼星

Open App

テーマ:あなたがいたから #219

「もう私、死んでもいいな〜」
不意に友人が言った。
「え? なんで?」
私は苦笑いして聞いた。
「え〜? そんな深い意味はないけどさ〜。今が一番幸せだから? みたいな」
私はそう言って笑う友人の横顔を見ていた。
「あなたが死んだら、残された私はどうなるの?」
「え?」
友人が私を見た。
私の視界が曇る。
「私だってあなたがいたから、ここまで生きてこれたのに。あの時、乗り越えられなかった壁の前で立ち尽くしたままだった。手を差し伸べてくれたのはあなたなのに。私をおいて行っちゃうの?」
私の胸の奥がきゅっと掴まれるかのようだった。
自然に視線が下を向く。その時
「ごめん!」
そう言って抱きしめられた。
温かい友人の体温に思わず涙が溢れる。
「そうだよね! 何言ってんだろ、私! 全く、だめだなぁ〜……。友達失格だなぁ……」
友人は抱きしめる力を強めた。
「私もあなたがいたから生きられているから。あなたも私より絶対先に死なないでよ?」

6/20/2023, 2:07:03 PM