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「あいつらよく3人でいれるよな。」

前を歩く仲間の3人と、なんとなく距離を取りながら2人で歩いていた。
全部又聞きだが、どうやらドロドロと不穏であまり健全に仲良しではないらしいことはなんとなく知っていた。でもそれも、全部勘違いなんじゃないかと思わせるほど、3人の後ろ姿は清々しく爽やかで美しい。

「まあ、外野がとやかく言うことじゃないんだよ」

少なくとも、だれも苦しそうではないし助けも求められていない。なら、見守るしかない。愛の形はそれぞれということで。

先の信号が点滅した。1人は走って渡り、2人は立ち止まった。走った1人は振り返りもせずそのまま歩いて先を行った。思わず顔を見合わせた。

「本当にわからん」

その目は既に前に向き、手前の止まっている2人ではなく、スタスタと歩く1人の背中を見つめているように見えた。
渡れないよな、お前は。羨ましいまであるでしょ、あの信号を1人で渡れるあいつが。わかるよ、自分も同じ側の人間だから。

「わかる日なんか一生来ないよ」

わざとらしくペースを落として歩いていたものの、恐ろしく長い信号のせいで2人に追いつき、白々しく話しかけた。やはり何事もないように会話が進む。まあ逆に理解されてないこともあるよなと思いだし強引に自分を納得させた。

9/5/2025, 10:21:02 AM