恋をしたことがない。恋をしている子が傷ついたり怒ったり泣いたりしているのをみていると、しない方が良い気もしたし、そこまで心を割いたら人生壊れるくらいに何も出来なくなりそうだなという、自分への信頼のなさもあった。
恋はしなくとも、ときめきは得られる。
人間同士の、性にばかりなところや、浮気してるかも! された! してやったなんていう傷ついたもの負けのような信頼なんてどこにあったんだといった醜い争いもない。美しい二人が愛し合う映画や漫画でお腹いっぱいだ。
今日は見守るだけの恋模様に飽きたので、書いてみようと思った。
こんな恋路が見たいと、経験したこともないのに軽い気持ちで書き始めた。
しかし、人を信じるのに時間がかかる人間が書いているため、この言動はどこからくる? 相手はどう受け取る? そのあと進展するには? そもそも思いを寄せるには? と長いなぜなぜ期を越え、漸く二人はお互いを、興味を持った人として意識し始めた。石橋を叩きすぎて壊して二人で違う道を探すもどかしい二人になり、最初にみたかった、恋人らしいやりとりは当分先になりそうだ。まだ話すだけの仲なのだから。主人公は第二の作者とは、あながち間違ってはいなかった。
ここまで来たら最期まで面倒見てやるしかない。私が出会わせたのだから。
ラストシーン、書きながらこんなの好きになるに決まってら、と自分で泣きながら書き終えた。
傍から見れば非常に滑稽だが、この二人分の半生を書くために机に向かっている間、私は確かに主人公として、紙の中の男を、今度は男として、紙の中の女に、本気の恋をしていた。
筆を置き、しばらく恋愛はいいかななんて、一生言わないと思っていたセリフを口にした。
【本気の恋】
9/12/2024, 4:48:36 PM