狼星

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テーマ:落ちていく #11

「星夜は流れ星を見たことあるか?」
学校からのからの帰り道、僕は友達の流星に聞かれた。
「ない、かな…」
「星夜もか…」
僕の答えを聞いて肩を下げる流星。なんで急に流れ星?と思っていると
「じゃあ、俺たち初めて見られるんだな」
そうニカッと笑って流星が言う。
「初めて『見られる』?」
キョトンとして聞くと流星はそんな僕に
「げ…。星夜知らないのか? 今日はリュウセイグンが通るんだぞ」
「リュウセイグン?」
流星は呆れたように首をふる。
「なぁ、俺たちもう小3だぜ? リュウセイグンくらいわかるだろ。流れ星が降るんだよ! 大量に!!」
流星は大きく手を広げて言った。
「とーちゃんが言ってた。今日は流れ星が大量に降るリュウセイグンなんだってさ!」
大量に大量にと、連呼する流星を見て大量に降るのは雨だけじゃないのか? と疑問を浮かべる。
流れ星すら見たことがないのにリュウセイグンが見られると言ってもあまりピンとこない。

「今日は絶対、夜、そら見ろよ!」
僕にそう言って帰っていく流星。
流星はリュウセイグンのことで頭がいっぱいみたいだ。
僕は想像した。
星なんて降ってきたらどうなるんだろう。星は夜空にあってキラキラ光っているけど、そのまま降ってくるのだろうか。
うーんどうなりながらも、最近買ってもらった辞書でリュウセイグンと引くと『流星群』というのが目に入る。
なんだか難しいことが書いてあってわからなかった。
でも、見てみたくなった。流星群を。

寒いな…。
冬空の下、外で流星群が来るのを待っていた。
僕はハーッと手に息をかける。
まだかな、流星群。
僕が視線を上に向けるとそこには
「わー……。きれい」
僕は初めて見た。星が落ちていくのを。
その景色は綺麗だった。凄く、凄く。
僕が想像していたのとは少し違ったけど、星が落ちるのを初めて見た。

「流星。今年も星が降るよ」
僕は高校生になった。
流星は中学の頃、病気で急にいなくなってしまった。
流星群はそんなに頻繁に来ない。
でも、今年はまた降るらしい。今日は、流星の命日だ。
「本当は、流星と一緒に見たかったんだけどな」
僕は夜空を見上げる。
すると、キラッと星が光ったかと思うとそれが落ちていく。それをきっかけに幾つもの星が落ちていく。
それはとても神秘的なものだった。
しかし、それがだんだん滲んでいった。
「あれ? なんで」
僕は下を向いた。奥歯を食いしばる。
「なんで……。僕は」
ポタリと地面に落ちたのは星ではなく。僕の涙だった。

11/23/2022, 12:03:17 PM