NoName

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「泣かないよ」
困ったように笑いながら君は言う。
月に照らされた伏目がちな睫毛がふるりと震えた気がした。
ー泣いてもいいんだよ。
なんて言葉を飲み込む。君を置いていく僕に、そんなことを言う権利なんてない。

君の涙を拭うのは、ずっと僕の役割だったらなんて、そんな、起こり得ない夢のようなことを強く願った。

冬から春へと季節の変わる頃だった。

3/17/2023, 4:45:43 PM