窓から見える景色が嫌いだった。
キラキラして。
うるさくて。
楽しそうで。
バカみたいで。
…………羨ましくて。
届かない夢みたい。
叶わない願いみたい。
遠い遠い世界みたい。
窓ガラスで屈折した景色をずっと見ていた。
綺麗なふりした汚物をずっと見ていた。
こわいものであふれた世界をずっと見ていた。
こわいものみたさじゃないナニカで、ずっと。
窓から見える景色を見ていたから。
ぎゅっと手を繋いで窓を開ける。
ガラス越しじゃないだけの世界が広がっていた。
「怖くないでしょう?」
「……こわいよ」
「あら。でもね、君が思っているよりずっと、誰も君を見ていないよ」
「……」
「それでも怖いなら、手を繋いでいよう。私強いの
、知ってるでしょう?ボコボコにしてやるからね!」
「…なにそれ」
直接見える景色も、窓から見える景色も、何一つ変わりは無かった。
けど、やっぱり。
人に遭うのはこわいから。
「…………はなさないで」
「よし来た!」
ぐっと握った拳の根本で盛り上がった立派な力こぶは、本当に人をボコボコにしそうな強さがあった。
お題「窓から見える景色」
9/26/2023, 7:02:29 AM