「きっと明日も」
私のおばあちゃんはマグロみたいな人だ。もちろん魚だったわけではない。ずっと活動をしている人だった、という意味だ。休みの日も朝から晩までゲートボールだのお茶のお稽古だの、写真サークルの集まりだので1日中家にいた記憶がほとんどない。そんな祖母が、今日は珍しく予定がないという。祖母とゆっくり話すまたとない機会だ。私はなぜそんなにも活動ばかりしているのか、聞いてみた。
「おばあちゃんねぇ、昔とっても大好きな人がいたのよ。歳は少し離れていたけれど、結婚したいって本気で思うくらいには好きだったわ。その人、すぐ近くに住んでてよく遊んでもらってたのだけれど、命の危険が伴う特殊で危険な仕事をしてねぇ…でも、すごく強い人だったから、絶対に死なない、明日も絶対会えるって思ってたの。ちゃんと女性として見てもらえるようになったら、女学校を卒業するタイミングで、想い伝えようって思ってたのよ。でもね、その人、私が卒業する前日に亡くなってしまってね。」
そこからなのよね、明日ってきっと来るけれど、絶対じゃないって思ったの。
「その体験があったから、おじいちゃんに出会ってアタックして、今があるってわけ。明日は絶対じゃない、だからやりたいことたくさんやって、後悔を残さないように生きるって決めたのよ。貴方もどうか、今を大切に生きて道をひらいていってね。」
おばあちゃんは、とても優しい顔をして私を見ていた。
翌日、満足そうな穏やかな笑みをたたえて、おばあちゃんは永遠の眠りについた。
9/30/2024, 2:41:13 PM