どこにも書けないこと
私は冒険者だ。両親の反対を押し切って故郷を飛び出し、広大なラクシアの世界を旅する冒険を始めた。その理由はただ冒険者は面白そうだったから。
それが私、冒険者ルミナのあらすじなのだ。仮にいい感じのことをして讃えられても、後世に伝わるのは大体こっちになると思う。
この日記は、冒険手記とは違うやつ。だから見つけた人限定で読める、本当のルミナのことを書いておく。
私は冒険者になる前、都心部とは違う離れた場所で暮らしていた。いわゆる田舎というもの、私たち家族はそこでひっそりと魔導機バイクの専門店を営んでいた。
その頃の私は、ルミナ・ライディオールは冒険者なんて毛ほども考えてなかったし、順当に父さんの店を継ぐんだろうと考えていた。
一応私は一家の長女であるだけで兄が2人いる。兄たちは家計を支えるために家を出てしまったけれども。残った私は父さんの作る魔導機バイクが好きだったから、この家を継ぐことを決めただけ。
でもある時急に店を畳むことになった。理由は面倒な信仰だとかこっちは邪教だとかそんな感じのことだった。簡単に言えば、都心部に住む『崇高な人達』の逆鱗に触れたというわけ。
店の無くなった今、父さんは魔導機バイクを作らなくなった。
どうしても、私はそんな事実を受け入れられなかった。
なんとかして店を取り返すことに決めた。冒険者になる前の密偵でもその信念は変わらない。ただ、冒険者の方が都合がいいと思って転職をしただけ。
お金が必要。人手が必要。強さが必要。
私は生まれつき小柄だから、何もかもが必要。
パーティのみんなには悪いけど、私は利用できるものは全て利用させてもらう主義なの。
冒険に一区切りついたらパーティのリーダーを辞めて故郷に帰る予定だ。その途中のどこかに、この手記を隠しておこうと思う。
すごい冒険者になれるかは今はまだ分からないし、たくさんのお金を持って帰れるかもわからないけど、お父さんたちの夢のために私は今日も頑張る。
ここまで読んでくれた“ファン”には選択肢がふたつある。
ひとつはこの手記を元あった場所に置いておくこと。
もうひとつは内容を世の中に全て話すこと。
どっちを取ってもいいけど…私がまだ生きてるうちは秘密にしておいて欲しいかな。
だって恥ずかしいからね。
『ソード・ワールド-家族思いなとある冒険者の話』
2/7/2026, 2:53:55 PM