なんとも嫌な気分が続いたと思ったら一転、今度はいい事ばかりが起きる。
ファミリーパックのアイスが一個だけ残っていたり、間に合わないと思ったバスが遅延でギリギリセーフだったり(急いでいる人はたまったもんじゃないが)、携帯の充電が切れそうな時にいたカフェでコードと充電口の貸し出しがされてたり、なんともいい気分だ。
「いやお前、それを運が戻ってきてると考えてるのならどう考えても釣り合いが取れないだろ。」
「そうかい?十分に戻ってきてるとは思うがね。」
中学校からの友人である須々木は顰めっ面でため息を吐いた。
「最近の不幸はなんだ?家の鍵を盗られる、空き巣に入られる、ストーカーからの脅迫文、挙げ句に刺されかけた。君のストーカーは良くやったね、留置所から出たら泥棒に転職できそうだ!」
「そんな散々な出来事をファミリーパックのやっっっすいアイス一つで許せるのか君は、とんだ馬鹿だね。」
たしかに鍵が無いのに気付いた日は、家に入るのに鍵屋さんに頼んで二万かかったし、空き巣に入られたときは下着やらetc.が盗まれて被害額は一万五千円ほど、ストーカーに刺されかけたとき、彼女が持っていたナイフは、空き巣に入られた当時は気付かなかったが盗まれていた良い包丁だった。
その他諸々も含めて五万円は損したというところだろうか。
そのに対してファミリーパックのアイスは6個入りで284円、単価47円
「たしかにね。そう考えると慰謝料入るまでどん底だ。だから一旦これで許すことにするよ。」
ちょっと遅い日になるだろうが、いつかは金が10倍20倍で帰ってくるとわかっているので、今の心の折り合いは些細な事で付けるという事で、自分の頭法廷は判決を言い渡す。
「まあ幸せだね、頭が。良いんじゃないそれで。」
「心配してくれてありがとね。」
ずっと偏屈さんな友人の裏返しな愛情表現もここまでのものは中々見られるもんじゃない。
それだけ心配をかけたという事実に申し訳なさと同時に嬉しさも感じる。
しかし、その気持ちを馬鹿正直に言ったら、今度は放送禁止用語でも叫ばれそうなので、心にしまっておいた。
8/22/2023, 2:09:43 PM