海月

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#26【遠い日の記憶】


初めての彼氏は頭が良くて
スポーツ万能で
イケメンではなかったかもしれないけど
自分の能力を鼻にかけることもなく
ユーモアのある人だった。

勉強も運動も中の下だった私は
そんな彼にすっかり魅了され
頼んでもいない友達のアシストで告白し
まさかのお付き合いスタート。
あれよあれよと言う間に彼女に昇格した。

しばらくして
さまざまな要因から不安が押し寄せた私が
彼にその気持ちを伝えると
こんな言葉が返ってきた。

「君が僕を嫌いにならない限り
僕が君と別れることはないよ」

嬉しい言葉なのに、どこか腑に落ちない。

この恋に、あなたの意思はないの?

それから数ヵ月後。
ちょっとした喧嘩の中で
私は繋がれていた手をわざと振り払った。
案の定、その手は引き留められることもなく
嫌いとも、別れるとも言わないまま
カレカノの関係は終わった。

あの時、あの言葉を鵜呑みにして
「私が彼を好きな限りずっと一緒にいられるんだ!」と
思えたら良かったのかな。

告白するつもりはなかった。
付き合うことになるとは思わなかった。
だって、あなたには好きな人がいたでしょう?

あなたの顔は忘れても
この恋だけは忘れられないわ。

7/17/2023, 1:20:18 PM