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空を見上げて思い浮かんだこと

ある夏の日、学校が終わり、早々に帰路に着こうとした私は、いつもと違う道を歩いてみたくなった。昨日もその一昨日もずっと同じ道を歩いていたのだが、今日だけ気分を変えたくなったのだ。
今年でもう高校2年生。来年は受験で、もう進路を決めてしまわないといけない時期にまで差し迫っていた。やりたいことはちゃんとある。ただ、美術系の大学に進学か専門学校に進学か、それを決めきれずにずるずると今日まで過ごしてきていた。
大学には推薦で行こうと考えている。そのための評定と美術での実績は残している。親も国公立大学と専門学校ならお金を出すとも言っている。でも、何か決めきれないのだ。
今日もまた同じような悩みを頭に留めながらいつもの分岐点についた。そして左右に分かれた分岐点を見て、いつもの道とは違う右側の草の生い茂った道を選んだ。そこは木漏れ日がちらちらと輝く涼しい日陰になっていた。
生まれてずっとこの街の住んでいると言うのに、全然知らない景色に少しの高揚感を覚えていた。整備されてない道は少し歩きづらかったが、探検をしている感覚に陥って、子供の頃に戻ったみたいだった。
子供の頃といえば小学生の時の将来の夢は漫画家だった気がする。結局親にやめろと言われて、デザイナーという夢を仕方なく追っているのだった。絵を描くことは好きだ。私は絵を描くことを真剣に仕事にしたい。でも周りは好きを仕事にすると大変だ、と言ってくる。絵はセンスだからって描いたこともないやつが偉そうに語ってくる。絵はセンスなんかでは片付けられない。どれだけ努力したかが全てなんだ。どれだけ魅力的な絵を描けるかの努力をしたかの。と誰にでも受け入れられそうな綺麗事を語っていると、なんだか情けなく思えてきた。
道はもういよいよ森といったところに差し迫っている。その緑の深さはなんとも言い難い不気味さがあった。加えて迷ったら出てこれそうにない気もしていた。でもなんだかここに入ったら自分が変わりそうだったから、足を進めることにした。鬱蒼とした森を進む。道もわからない道を歩みを止めずに進んでいく。この薄暗く少し肌寒い森を。そうして進んでいくと少し開けた場所に出た。そこには階段があってどうやら下に降りられるようだった。
階段を降りてふと目の前を見ると、いつもの見慣れた景色が目に入ってきた。ここは自分の家の近くだった。結局左右どっちの道に行っても家には着くことができた。
…もしかしたら家に着くまでの道なんでなんでもいいんじゃないだろうか。最終的に家につければいいのだから。そう思って上を見上げた空はいつもよりも優しく私を見守っているような気がした。

7/16/2024, 11:20:52 PM