チッ
雨かよ…
ベランダから外を見ると雨に佇む一人の老人が目についた
雨に濡れただ微動だにせず
私はその異様な光景にしばらく目を奪われていた
すると一人の女性がその老人に駆け寄り老人の手を引いてトボトボ歩き出した
老人をよく観察すると口は半開きで視点が合ってないような視線、靴を片方しか履いていない
これは認知症かもしれない
そんな推測が過ぎったのは私自身のお爺ちゃんが認知症を患っていた過去の経験があるからだ
私のお爺ちゃんは介護期間は短かかったものの、徘徊したり何でも口に入れたり、家族は介護に苦労していた
お爺ちゃんはある夜眠る様に逝ってしまったけど、まるで自らが認知症である事を理解していて周りに迷惑をかけたくないから亡くなったような最期だった
それはもう字がかけるはずがないお爺ちゃんが自分の娘である私の母に感謝の手紙とお小遣いが入った封筒を母の枕元に置いてあったからだ
「トイレに一人で行けなくて手伝ってもらってごめんなさい
いつもありがとうございます
お身体には気をつけて下さい
少しですが何かに使って下さい」
その字はミミズが這ったような頼りない字ではあったが確かに父だと母はこぼした
以前の優しい父が帰ってきたような文章だと母は涙を流していた
最後の最後に大好きな父が帰ってきたと何度も涙を拭っていた
8/27/2024, 8:27:05 PM