NoName,

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休日に公園までの散歩をするようになって、花の移ろいに気付くようになった。
心に余裕ができたのか、疲れ果ててまだ30前なのにすでに枯れてきたのか。ま、前者ということにしておく。

今頃はあじさいだ。「紫陽花」と書くんだな。なんかイメージ的にわかる気がする。
でも何だこれ、この一株だけ、他のと違う。緑から白くなんの?形もなんか丸くない。
よし、ググってみるか。
しゃがみ込んでスマホのレンズを花に向けた。

すると何かが俺の背をつついた。
「何だ?」振り向くとガキがいた。
なぜか俺につられて誰もいない後ろを振り向いている。アホだが、おもしろい。
「何か用?」俺が問いかけると、ガキは俺に向き直って言った。

「おじちゃん、カタツムリさんのお写真撮ってるの?」
おじちゃん…それに「お写真」て。
今どきのガキ、もといお子さまはこういう言葉遣いすんのか、ヘー。
「カタツムリじゃねぇよ。つーかカタツムリ?どこ?」見わたしてもいない。
見知らぬお子さまは、「こことね、ここ、ほらここにも。」立て続けに3匹指さした。
「お前、良く見つけられるな。」と俺が言うと、そいつはドヤ顔で小鼻を膨らませた。

ガキの目の高さに広がる世界は俺の見ているものとは違うのだろう。自分が何を視たいのかも。
そいつはカタツムリを1匹、あじさいの葉ごと捕まえると、母親であろう女のところへ走って行った。
「カタツムリのおじちゃんバイバイ。」
おじちゃんでもねぇし、ましてやカタツムリのおじちゃんじゃねぇのよガキんちょ。

「ま、いっか。」
気づけば俺とあじさいにポツリポツリと雨が降り出していた。


お題「あじさい」

6/14/2024, 3:56:22 AM