りゃん

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首都圏の電車の混雑率は250%を超えると殺人的だ。混雑率が200%だと圧迫を感じるが週刊誌が何とか読めるレベル、混雑率が250%だと電車が揺るたび体が斜めになって身動きが取れないレベルである。コロナ以降大分混雑率が緩和して来たが20年前のJRは250%が毎日だったのである。

恵理は都心に通勤するため、毎日混雑率250%の電車に乗らなければならない。毎朝が憂鬱だが郊外から通う恵理はラッシュアワーを避けようと始発に乗っても回避は無理だった。
駅員さんに押され何とか扉付近に乗り込むと電車が発車した。次の駅につくと降りる人と乗り込む人のなだれが苦しい。
恵理は毎朝耐えながら会社勤めを頑張っていた。

都心に近づくにつれ乗車率がエグい事になっていた。
「ドンッ。」
人に押され恵理は扉に張りついて身動きが取れなくなってしまった。
反対側のホームの扉が空くとこちら側は押されに押される。降りる人も必死だからだ。
ホームにいる人から見つめられた。
恵理はもみくちゃになっている満員電車を気の毒がる人の視線なのかなと感じた。
更に別のサラリーマンから見つめられるというよりは凝視されている。
なんだろう何かがオカシイ。2人の視線だけではなくホームにいる男子学生の連れ合いがこちらに視線を向けて二度見してきた。
いよいよおかしい。恵理は何故なのか分からず寝癖が酷いのだろうか?満員電車過ぎてメイクがよれたのか?正解が分からず身の置きどころがない。
男性から好意の視線を向けられることも無くは無いがそういうときはチラ見が多くバレてないだろう的な視線が来る。
見つめられるしかも時が止まったような凝視は何か変だ。そんな考えも会社の最寄り駅に到着し、やっと電車を降りて恵理は一息つき、もみくちゃになった身なりを直そうと下を向くとそこにある物がなくなっている。
「これか!」
恵理のブラウスの第2ボタンがはじけ飛びピンクのブラジャーが露わになっていた。
公衆の面前で醜態を晒していたのかと思うと恵理は恥ずかしさで倒れそうになった。
「お気に入りのブラウスだったのにー。」
恵理は初めて会社を辞めたくなったのだった。





『見つめられると』

3/28/2023, 11:32:24 AM