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#18 気持ちのよい秋風。 

冷たい空気の中、ゆっくり深呼吸をする。
体の中のものが全て入れ替わったような感覚がした。
"沢山の人生がある場所"から家へ帰る。
あの場所は、楽しいけど疲れる場所でもあった。

ドアを開けると、紅茶の香りがした。
久しぶりだな。そう思いながら、柔らかい椅子に座る。
心の余裕なんかなくて、紅茶を飲もう、とも思っていなかった。生きることだけに必死で。

淡い色のマグカップから、白い湯気が出ていて、
なんだか、可愛かった。

ふぅ〜、と息を吐きながら、温かい紅茶を飲む。
体も、心も、一気に温まる感じがした。

やっぱり、心に余裕がないとリラックスなんてできないし、
この一日が大切だということも気づかない。

世の中には、そんな人がたくさんいる気がする。
昨日も今日も、いい日だった。

明日という日がきますように。
そして、多くの人の心に余裕ができますように。

この世が平等になりますように………。
現実は、何も平等ではないから。



そう願って、紅茶を飲み干した。


___紅茶の香り


10/27/2022, 11:16:53 AM