荼毘

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「狂気の山脈」

テーマ「終わらせないで」

ショートショート ホラーファンタジー


「こちらの方が温まりますよ」
私は無我夢中でペンを走らせていた、暖を取ることなどどうでも良いと感じるほどに。
「どうも」
私は指し示された位置へ移動した。そこにも机はある、言われてみればたしかに寒かった。
私はことの始まりから、こと細かに自分が見たことを手紙にしなくてはならない。そして、伝えなくてはならない。次の研究活動の計画を中止する必要性を根拠を持って説明しなくてはならない。未知なるものの研究は非常に重要なことなのは分かっている。だが、どうしてガーヴァがこの狂った峰々で行方不明になったのか私は知っている。他の仲間も知ったようだが、私のいる避難所を見回しても仲間たちの姿はない。無事に帰ってこれたのは私だけなのだろうか。
この山脈は甘くない場所だった、特に今日は荒れていたから、不思議ではないのかもしれない。あの未知の存在から逃げ切れただけましなのだろう。
私はペンを進めた。何があったのか忘れてしまわないうちに、気がどうにかなる前に紙に残したい。世界中の研究者に向けて。

•••手紙•••
目の前が見えなかったし早く戻らないと、と思った。もうガーヴァが見つかる気がしなかった。ただただ吹雪の荒れる雪山に狂気のオーラを感じ続けていた。私は捜索のことなど考えられないほどに嵐に翻弄されていた。だが、問題は嵐だけでもない。古代の不可思議な生物がどこにいるのかわからないこと、いつ襲われてもおかしくないことだ。おそらく、ガーヴァは中身を取られたのだろう。ガーヴァの内側はキャンプで発見されたが、不思議なことに外側は無かった。奇妙な形状をした切先の鋭いものでガーヴァは開かれたようだ。おそらく、あの腕のようなものの先端を使ったのだろう。
私たちが研究対象として見ていたものは、私たちを上回る存在だったのだ。あれをネクロノミコンに登場する古代の生き物、旧支配者と呼ぶことにした。
旧支配者は最初、私たち研究チームによって凍結された状態で発見された。発見場所はこの山脈の地層のはるか深く。未だ発見されたことのない大きな空洞のある地層で旧支配者は保存されていた。私たちは近くの石灰岩によってカルシウムが骨や硬組織に取り込まれ結晶化したのだろうと思い、貴重な研究サンプルとしてキャンプに持ち帰ることにしたのだ。
だが、キャンプに持ち帰るやいなや、私たちを乗せるソリを引く役目を担う犬達の様子がおかしくなったのだ。
吠え続け、騒がしく動き回り、檻から逃げようとする犬が出始めた。私たちはそれを、嵐の予兆だと思った。だが、今になって違かったのではないかと思う。
私たち研究チームは研究サンプルを山の麓のキャンプ場に持ち帰った後、それぞれ持ち場のキャンプへ戻ることになった。

11/30/2023, 4:53:03 PM