りゃん

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さやは小学校1年生になって鍵っ子だったが学童は好きになれなかった。別に一人でお留守番出来るし、森を伐採して新興住宅地の開拓途中の原っぱを探検するのが面白かった。
今日もランドセルをおいて探検に向かうところに
「ねぇねぇ、この辺で団栗取れるところ知らない?」
と声をかけてきたのは中学生か高校生の制服を着たお兄さんだった。
「お兄さん、困ってるの?」
「そうなんだよなぁ。幼稚園の弟にドングリゴマ作ってやろうと思ってさ。」
そう優しく微笑む弟思いのお兄さんが可哀相になって私は
「とっておきの秘密の場所案内してあげるよ。」
そういってお兄さんを案内した。
原っぱに着いてドングリを拾い集めている間に薄暗くなってきた。
「ありがとう、ちょっと疲れたから休憩しよう。」
と並んで原っぱに体育座りで腰を下ろした。
「あっまだ明るいのに星が見えるよ!ちょっと寝転んでごらん。」
お兄さんを信じて仰向けになると顔に真っ白なハンカチをかけられた。
私は白いハンカチは亡くなった人にかけるんじゃなかったかな?と思った瞬間お兄さんが覆い被さってハンカチの上から口を押さえ下腹部に何かを擦りつけている。
何をしてるかさっぱり分からないが次第に恐怖と気味の悪さを感じ始めた。
誰に教えられた訳ではないけど泣き叫んだり無理をしたら殺されちゃうのかなって考えた。
私はなるだけ落ち着いた声でお兄さんが困った状況を作らなくてはと思い、息を弾ませるお兄さんに
「お兄さん、トイレ行きたい。オシッコ漏れちゃう。また戻ってくるからトイレ行かせて。」
お兄さんは漏らした女の子の相手は面倒くさいだろうとすんなりどいてくれた。
私はもうダッシュで家まで走った。後ろも振り返らずにバカみたいバカみたいバカみたいバカみたいバカみたいバカみたいバカみたいバカみたいバカみたい

やっと家に辿り着き鍵をかけてカーテンの隙間から外を覗き込みお兄さんがいないことを確認して家の明かりも付けず机の下で唇を噛んだ。
バカみたい、知らない人について行ったらダメって言われてた。
バカみたい、制服のお兄さんはドングリなんかほしくなかった。
バカみたい、外で寝転んで星なんか見なきゃよかった。
バカみたい、バカみたい、でもこんなことお母さんには話せない・・・。
バカみたい、もう探検なんかしない・・・。

『バカみたい』

3/22/2023, 11:49:51 AM