NoName,

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出張先から帰京する新幹線の中で、私は何度もスマホの時計を確認する。もう間に合わないとわかっているのに。

病院の面会時間ギリギリに彼女の病室に飛び込むと、彼女はベッドの上に穏やかな表情でよこたわっていた。

「すまない。」私が言うと、彼女は「何で謝るの?見て?」と、彼女のとなりで、おくるみにくるまれた小さな命を私に見るよう促した。

私がのぞき込むと、赤ん坊はすやすや眠っている。
「抱っこしてみる?」
すでに上半身をお越し赤ん坊を胸に抱いた妻が言う。私はうなずいて、そっと、そして最上級に壊れやすい大切なものを扱うがごとく、我が子を抱いた。
「ママのお腹からやっと出てきてくれたな。生まれてきてくれてありがとう。私が君のパパだ。よろしくな。」
妻のもとに子供をかえすと、私は妻に言った。
「よく頑張ってくれたね。ありがとう。体調は大丈夫かい?立ちあえなくてすまない。」
「仕方ないわ。この子が早く私たちに会いたいって、予定日より3日も早くなってしまったんですもの。
でね、この子の名前なんだけど…。」
面会時間を大幅に過ぎてしまい、看護師がさすがに注意をしにやってきた。
「後は電話で。また明日、何としても来るから。」
私は後ろ髪をひかれつつ、幸せをかみしめながら帰途についた。


お題「病室」

8/3/2024, 3:52:09 AM