終わりにしよう。
あなたはあと何回、泣けばいいのだろう。
あなたはあと何回、平気なフリをするのだろう。
あなたはあと何回、睡眠薬を飲むのだろう。
あなたはあと何回、朝が来たことに絶望するのだろう。
私はあと何回、その泣き声を聞こえないふりするのだろう。
私はあと何回、心配していないフリをするのだろう。
私はあと何回、睡眠薬の隠し場所を見つけるのだろう。
私はあと何回、朝日を恨んで泣くのだろう。
全てを共感することは出来ないけれど、明確にあなたが何か辛いものに蝕まれていることだけは理解している。
時刻は午前四時。外はほんのりと明るくなってきている。
日付が変わるくらいにはおやすみなさいをしたはずなのに、今夜もあなたは静かに布団から出ていく。
きっとまたいつも通りにダイニングに行って、私を起こさないように声を押し殺して泣いて、お酒を煽って、それでも眠れなくて睡眠薬を飲むの。そして何事も無かったかのように布団に戻って、それでも私が起きるより少し早く起きて朝ごはんを用意した後、私に目覚めのキスをしにくるの。
『心配だよ』
『だいすきだよ』
『どこにも行かないで』
『死なないで』
何度も何度も伝えようとしたけれど、あなたの瞳を見ると、いつも言葉は出てこなくなってしまう。
こんな安い言葉で、あなたの中の絶望は拭えるのだろうか。一方的に励ますなんて、それは単なる私の自己満足なのではないだろうか。そう思うと、口が開いてくれなくなる。
あなただって、きっと随分もがいたんだよね。それでもどうしようもないほどの重たい憂鬱があなたにぴったり引っ付いて離れてくれなかったのでしょう?
あなたのことがだいすきだから、あなたはギリギリまで頑張ってしまう人だってことはちゃんと知っている。あなたはいつも自分を否定するけど、あなたがひどく努力家であると知ってるよ。
だからこそ、そんなに重たい鬱屈に苦しんでいるあなたを、詳しい事情も知らない私が励ますなんておこがましいんじゃないかなって思ってしまう。
でも、そんなことをいくら悩んだって神様はまだ私たちを助けてくれなくて、お月様は待ってくれなくて、また太陽が昇って朝が来てしまう。
だから
終わりにしよう。
もう、こんな夜は終わりにしよう。
あなたが独りぼっちになる夜は、もう終わりにしましょう。
今までずっと、迷ってきた。上手にあなたを慰める自信がなかったの。だけど…今夜のあなたはいつもより、酷く寂しそうに見えた。その様子が視神経を通って脳に入った瞬間、迷いだとか、躊躇いだとか、そんなものはくだらないものなんだってすぐに理解できた。ただあなたの横で、あなたを抱きしめるだけ。今夜はそれで十分…だと思うから。
終わりにしよう。
7/15/2023, 7:28:33 PM